研究課題/領域番号 |
17K10033
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
木村 聡一郎 東邦大学, 医学部, 准教授 (60408870)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / 疾患感受性 / 連鎖解析 |
研究実績の概要 |
肺炎球菌は、市中肺炎の原因菌として国・地域を問わず最も高頻度に分離される。本菌は口腔・鼻腔に存在する常在菌であり、誤嚥などにより肺胞腔に侵入した肺炎球菌は肺胞マクロファージ・好中球により貪食殺菌されるが、莢膜が存在すると貪食殺菌に対して抵抗性に働く。肺炎球菌自体の病原性については多くの報告があるが、肺炎の重症化に関わる宿主側の要因はほとんど解明されていないのが現状である。これまでに莢膜型19Fの肺炎球菌によるマウス肺炎モデルを構築しており、この臨床から高頻度に分離される莢膜型の肺炎球菌によって肺炎が重症化することを見出している。そこで本研究では、肺炎球菌性肺炎の重症化に関わる疾患感受性遺伝子を特定し、重症化と莢膜型との関連性を見出すことを目的としている。 これまでに、臨床から高頻度に分離される莢膜型19Fの肺炎球菌をCBA/JNマウスに感染させることによって、肺炎が重症化することを見出している。また連鎖解析法により推定している責任遺伝領域に存在する遺伝子Xとその関連遺伝子に関して、肺炎球菌に対する疾患感受性マウス(CBA/JNマウス)と非感受性マウス(CBA/Jマウス)とで遺伝子発現量に差が見られることが分かっている。そこで本年度は、肺炎球菌の莢膜型と疾患感受性に着目し各種検討を行った。その結果、19F型莢膜を欠損した肺炎球菌株はCBA/JNマウス肺内での増殖は見られず、肺炎の重症化も起こらなかった。この時の肺での遺伝子発現量を測定したところ、野性株(莢膜保有株)において誘導される各種遺伝子発現がみられなかった。このことから、本疾患は莢膜に依存した現象であることが推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)疾患感受性と肺炎球菌莢膜型との関連性に関する検討 これまでの検討により肺炎に対する感受性の高いCBA/JNマウスでは、莢膜型19Fの肺炎球菌に対して肺炎が重症化することが分かっている。しかし、その詳細が分かっていないため、19F型莢膜欠損株(共同研究者より分与)を用いて検討を行った。19F型莢膜を保有する野性株はCBA/JNマウスの肺内で増殖できるが、欠損株ではCBA/JNマウスの肺内で増殖することはなかった。一方、感受性の低いCBA/Jマウスでは野性株・欠損株共に肺内での増殖は見られなかった。この時の肺のサイトカイン、ケモカインの動きを感染3日目の時点で確認したところ、野性株では欠損株と比較してCxcl1、Cxcl2、Cxcr2、Ifngの遺伝子発現が有意に増加していた。一方、同条件にて15A型莢膜保有株との比較を行ったところ、CBA/JNおよびCBA/Jマウスにおいて、これらの遺伝子発現量の増加は見られなかった。以上のことから、肺炎の重症化に関与する各種遺伝子発現量の増加には肺炎球菌の莢膜を認識していることが推察された。 2)CBA/JNおよびCBA/Jマウス由来マクロファージの貪食殺菌能の評価 マクロファージの活性化を評価するために、2系統のマウスからマクロファージを回収し、肺炎球菌を接触させる事による貪食殺菌の比較を行った。両者共に貪食能の違いは見られなかったが、CBA/Jマウス由来マクロファージと比較してCBA/JNマウス由来マクロファージの方が殺菌能が低いことが分かった。このことからも感染初期のマクロファージの機能低下が致死感受性を高めていることが推察された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討により、連鎖解析法により推定している疾患感受性遺伝子については、肺炎球菌感染により疾患感受性マウスと非感受性マウスとで遺伝子発現量に差が見られることが分かった。また、マクロファージの貪食殺菌能にも違いが見られることが分かった。さらに肺炎の重症化には特異莢膜(19F型)の認識が重要であることが分かった。一方、これらの現象は莢膜型19Fのみで見られる現象であるため、なぜ莢膜型19Fのみが肺炎の増悪に関わるのかは分かっていない。今後は上記の機能解析を進めると共に、莢膜型19Fの莢膜構造との関連性を検討する予定である。また、これまでは自然免疫のみに着目した検討を行っているが、抗体産生能などについては未着手である。そこでCBA/JとCBA/JNマウスでのIgGやIgAの産生誘導に関して検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたエピゲノム解析が未実施であるため解析費用が未使用である。一方、本研究を実施する中で検討が必要となった抗体産生能に関する検討が必要となった。よって、抗体産生能の解析に必要となる試薬などを購入予定である。
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