肺炎球菌は、市中肺炎の原因菌として国・地域を問わず最も高頻度に分離される。肺炎球菌の病原性に焦点を当てた研究は多くの実績があるが、肺炎の重症化に関わる宿主側の要因はほとんど解明されていないのが現状である。申請者らのグループでは、これまでに莢膜型19Fの肺炎球菌によるマウス肺炎モデルを構築しており、この臨床から高頻度に分離される莢膜型の肺炎球菌によって肺炎が重症化することを見出している。そこで本研究では、肺炎球菌性肺炎の重症化に関わる疾患感受性遺伝子を特定し、重症化と莢膜型との関連性を見出すことを目的としている。そこで本年度は、肺炎球菌に対する疾患感受性遺伝子(群)を中心に、感染応答への関与、分子機構の解析を行った。 連鎖解析法および比較ゲノム解析から、重症化の要因が遺伝性であることが判明し、Cxcr2 を責任遺伝子として推定した。そこで肺炎球菌感染後の Cxcr2 ならびにそのリガンドである Cxcl1/2 の発現量を検討したところ、非重症化型マウスでは感染初期に各遺伝子量の発現が増加したのに対し、重症化型マウスでは感染後期まで発現増加が認められなかった。このことに相関して、肺内の好中球およびマクロファージ数も同様の経時変化を辿り、重症化型マウスでは自然免疫細胞の動員が遅延し、その結果として肺炎球菌の排除が十分に行われていないことが判明した。以上のことから、感染後の初期免疫応答の遅延が肺炎の重症化において重要であることが示唆された。
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