研究課題/領域番号 |
17K10034
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
須崎 愛 日本大学, 医学部, 准教授 (90251454)
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研究分担者 |
早川 智 日本大学, 医学部, 教授 (30238084)
相澤 志保子 日本大学, 医学部, 准教授 (30513858)
TRINH DUYQUANG 日本大学, 医学部, 助教 (90647190)
神谷 茂 杏林大学, 保健学部, 教授 (10177587)
大谷 郁 東海大学, 医学部, 准教授 (30377410)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウェルシュ菌 / 敗血症 / 血管内溶血 / 溶血毒 |
研究実績の概要 |
ウェルシュ菌は、頻度が少ないものの重篤な敗血症を生じ、特に著しい血管内溶血を生じる症例は電撃的で致死的な経過をたどるが、この病態を引き起こす病原因子については、未だ明らかになっていない。 我々は、血管内溶血性敗血症を生じた希少なウェルシュ菌の臨床分離株を使用し、溶血株がJCM株に比べて増殖速度が早い傾向にあることを確認した。次に臨床分離株のDNAを抽出し、溶血群と非溶血群での既知の病原性関連遺伝子(θ毒素、κ毒素、ヒアルロニダーゼ遺伝子等)や病原性関連調節遺伝子(二成分制御系virR/virS 遺伝子やVRRNA)の遺伝子レパートリーの解析を行なったが、溶血群と非溶血群の間で有意な差を認めなかった。 個々の菌株の検討で明らかな差異が認められないため、宿主要因の検討も必要と考え、ウェルシュ菌菌血症患者10年分についてカルテベースでの詳細な検討を加えたところ、溶血群患者において発症年齢が若いこと、全例にSystemic inflammatory response syndromeを伴っていることを明らかにした。 そのため、ウェルシュ菌による血管内溶血敗血症には、すべてのウェルシュ菌が持つα-toxin以外の毒素・病原因子の存在が強く示唆され、遺伝子レベルに加えて菌体が産生するtoxin量を再検討し、溶血群でθ-toxinの産生量が多い傾向にあることを認めた。 このθ-toxinの産生量の違いが、溶血群菌株による臨床像の特徴と関連するかどうかを調べる目的で、ヒト免疫細胞での検討を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ウェルシュ菌が産生するθ-toxinの、ヒト免疫細胞に対する作用の検討を開始していたが、英国Bio-Rad社の基幹システムのサイバー攻撃被害や、武漢の物流網停止による試薬・物品の納入停止、実験機器の修理遅延などにより、研究の中断を余儀なくされている。
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今後の研究の推進方策 |
溶血群と非溶血群で臨床分離株のθ-toxin産生量の違いが、臨床像の特徴と相関するかどうかを調べるため、健康ボランティアの末梢血を採取・使用することについては、学内倫理委員会の承諾を既に得ている。 今後採取した末梢血からヒト単核球を中心にした免疫細胞を使用し、サイトカイン産生を含むウェルシュ菌θ-toxinの作用を溶血群と非溶血群で比較検討し、ウェルシュ菌による著しい血管内溶血の原因に、θ-toxinの作用がどの程度関わっているかの確定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中にヒト免疫細胞におけるサイトカインの産生状況を、英国Bio-Rad社の機器と試薬を使用して測定し、研究結果をまとめる予定であったが、12月に英国Bio-Rad社の基幹システムのサイバー攻撃被害や、COVID-19による武漢の物流網停止により、試薬・キット類の納入停止、実験機器の修理不能が生じ、研究の中断を余儀なくされた。 次年度に、使用予定であった試薬・キット・機器を用い研究を終了する予定である。
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