本研究では、インフルエンザウイルス株の亜型間で幅広く交差反応しかつウイルス中和能を有する抗体を用いて、ウイルス株に交差反応する中和抗体を血清中から検出する系を構築することを目的として実施している。グループ1のH1型に属するウイルス株とグループ1に属するウイルス株を幅広く交差反応する抗体を用いて検出系を構築し、H1型ワクチン接種前後における血清中の交差反応性抗体の有無を検出したところ、接種後の血清において接種前よりも目的抗体の増加が検出された。検出用抗体はグループ1に属するウイルス株に対する交差反応性という特異性を持つことから、当該年度ではグループ1内のH1型以外の亜型ウイルスを対象とした検出系を検討し、同じワクチン接種前後の血清を用いて評価した。H1型以外のウイルス株での検出系においても、血清中の交差反応性抗体の検出は可能であった。H1型ワクチンの接種後の1か月半の間に血清は複数回採取されていたことから、それら全てについてH1型とそれ以外のウイルス型での検出系について検討したところ、ワクチン接種により交差反応性抗体も誘導され、接種後少なくとも1か月以上は維持されていることが確認できた。暴露されていない未経験のウイルス株で構築した検出系でもこれら抗体が検出され、さらにH1型ワクチン接種により抗体量が上昇していることも確認できた。これらにより、同一グループ内での交差反応性抗体の検出が可能であるとともに、ワクチン接種株以外のウイルス株を検出系に用いることにより、ワクチン接種により同一グループに属する別のウイルス株に対しても効果のある交差反応性抗体の産生が確認できた。
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