研究課題/領域番号 |
17K10038
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
高田 徹 福岡大学, 医学部, 教授 (90268996)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオフィルム / MRSA / 非抗菌薬 / 界面活性剤 |
研究実績の概要 |
非抗菌薬として界面活性剤に抗菌活性があることは以前から知られているが、各種界面活性剤を用い、MRSAバイオフィルムに対する効果と安全性を検討した。 研究方法として高バイオフィルム形成能を有するMRSA臨床株(ATCC BAA-2856)を用いて、少量の菌とともに各種界面活性剤(陽イオン系、陰イオン系、両性イオン系、非イオン系)を添加(0.0005%~0.5%)し、37 ℃、24時間培養後、生菌数のカウント、クリスタルバイオレット染色法により定量化した。バイオフィルム産生の基質はプラスチック、マウス皮膚切片(ダーマルチップ)、シリコン、ステンレスを用いた。3T3繊維芽細胞はMTSアッセイを用い、細胞生存率を算出した。結果、非イオン系であるPS80以外の界面活性剤は、培養線維芽細胞に対し急激な毒性を示したが、PS80では最高濃度でも50%程度にとどまり、細胞障害性発現は緩徐だった。4種の界面活性剤は全てMRSAバイオフィルム形成を抑制したが、陽イオン系と陰イオン系では細胞毒性の発現が顕著であった。PS80には細胞毒性は認めなかったものの、バイオフィルム形成を特異的に抑制した。その効果は基質への菌の接着抑制だった。様々なバイオフィルム形成基質を用い、PS80の効果を検討した。ステンレスへのBF形成は抑制できなかったものの、ダーマルチップやシリコンではBF形成を抑制した。 MRSAバイオフィルム形成は菌の基質への付着から始まるものの、PS80はその付着を抑制し、MRSAによるBF形成を効果的に抑制した。バイオフィルム形成が危惧される皮膚組織やプラスチック、シリコン素材の医療器具をPS80で前処理することで、菌の付着およびバイオフィルム形成を阻止でき、異物感染が原因となる難治性感染症への移行を予防できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験を遂行するマンパワーと時間の確保に依然困難を伴った。但し、当初の実験計画の対象として考えていた非抗菌薬について、界面活性剤まで拡げた結果、一定の研究業績を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
MRSA菌血症から分離された血液分離株について、バイオフィルム関連遺伝子およびバイオフィルム産生能、各種病原遺伝子について系統的な解析を加え、臨床像との関連について解析を加える。また、バイオフィルム産生能の高い株について抗バイオフィルム効果を認める界面活性剤をはじめとする非抗菌薬の効果を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回行った界面活性剤に関する実験は既存の物品で行える内容のものが多く予定程の物品消費が無かった。次年度は解析菌株数を増やし、関連遺伝子解析や非抗菌薬の効果に関する解析を行うために使用予定である。
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