研究課題/領域番号 |
17K10038
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
高田 徹 福岡大学, 医学部, 教授 (90268996)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | MRSA / バイオフィルム / 非抗菌薬 / 界面活性剤 |
研究実績の概要 |
我々はこれ迄、本研究課題において、非抗菌薬としてPolysorbate80(PS80)を用いた治療効果を検討した結果、高い抗バイオフィルム効果と安全性を示すことを明らかにした(Sci Rep 2019)。さらに、血液分離株を中心とする種々のMRSA臨床分離株につき非抗菌薬として界面活性剤をはじめ複数の薬剤を用いてMRSAバイオフィルムの制御効果を検討した。結果、対照群と比較して抗バイオフィルムと安全性とが確認された。しかし、治療効果は感染局所の部分的なもので、器材上や感染細胞内で持続感染するMRSAの完全な除去効果は得られなかった。また器材の種類により、一部の器材では非抗菌薬が器材への接着を抑制することが明らかとなったが、他の器材では効果が認められなかった。当該年度においては、治療効果の差異に関わる菌側の因子を明らかにするため、MRSA臨床分離株の解析を行った。 100株余りのMRSA血液分離株を対象にマルチプレックスPCR法による遺伝子タイピング解析(SCCmec型、agr型、およびPOT法)による解析を行った。 分離株の分離年度と遺伝子型の関連とをみると、経年的にSCCmecII/agrII型のいわゆる病院感染型MRSAが減少し、2015年よりSCCmecIV型+SCCmecV型の市中感染型MRSAが主体となっていることが明らかとなった。その他、SCCmec型別不能であった20株弱の7割以上はPOT法解析で同一のクローンであることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度も新型コロナウイルス感染症の流行持続に伴い医療機関における実務上の各種対策や診療に関わる者として、十分に本研究に専念できる時間が得られなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度において解析を進めた菌側要因の解析につき、さらに薬剤感受性とバイオフィルム形成性との観点から解析を行う。それらの成果により抗バイオフィルム効果に関わる菌側因子の同定を進める。 併せて近年の血液分離株に関する疫学的動向の解析を行う。本年度は最終年度に当たるためこれまでの成果につき学会発表、論文発表を行う予定である。 新型コロナウイルス感染症流行の持続が、本年も業務遂行の妨げになりうるが、研究内容につき学内共同研究でタスクシェアを進める対応をとる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は新型コロナウイルス感染症の流行に伴い医療機関における実務上の各種対策や診療に関わる者として、本研究に専念できる十分な時間が得られなかったため次年度使用額が生じた。次年度は研究計画に関わる研究の遂行、学会発表、論文発表に関わる費用に充てる予定である。
|