研究課題
本研究は侵襲性アスペルギルス症の主要な原因菌であるAspergillus fumigatus(A.fumigatus)菌体外に放出される分泌小胞が、感染時、血中あるいは尿中に放出されることを想定し、それに含まれるRNA、タンパク質を検出し、診断系に応用することを目的としている。今年度は以下の結果を得た。1.調製方法の検討:合成培地であるSD培地でA.fumigatusを培養し、超遠心により培養上清から分泌小胞を調製すると、分泌小胞と共にほぼ同じ大きさの棒状の結晶と考えられる物質が多数共沈殿した。それを除くための培養条件、超遠心条件を検討したが、有効な方法は見つからなかった。分泌小胞タンパク質の解析の際に問題になる可能性が考えられるが、YPD培地で培養することで回避する事とした。2.回収率の検討:超遠心法による分離では、糖と考えられる多量の共雑物がゲル状に共沈殿し、分泌小胞の回収率に影響を与えた。ショ糖等を用いた超遠心分画法により共雑物を除く条件は見つかったが、分画方法による収率低下が新たに生じ、結果的に回収率の大きな改善は見られなかった。3.特異的抗原の検出:分泌小胞にアスペルギルス属特異的なガラクトマンナン抗原が含まれるか検討した。超遠心で得た分泌小胞をゲルろ過法により分画し、抗ガラクトマンナン抗体で抗原を検出したところ、低分子画分のガラクトマンナン分子だけでなく分泌小胞画分にも抗原が検出され、分泌小胞の分離パターンと一致した。4.分泌小胞中のRNAの検出:昨年度の行った分泌小胞に含まれるRNAの網羅的解析に基づき存在量の多いリボゾームRNAと新規small non-coding RNAをターゲットとする検出系を、菌由来の全RNAを用いて構築した。分泌小胞RNAを検出する上で分泌小胞の安定性が問題となったが、市販の試薬を使う事で改善し、現在分泌小胞RNAを用いて検討している。
2: おおむね順調に進展している
昨年度の報告書で、タンパク質の解析を令和元年度にするとしており、その他はほぼ計画通りに進行している。
当初の計画通りに進め、来年度には分泌小胞RNAを検出する系を確立する。タンパク質の網羅的同定には、培地からのタンパク質の混入を防ぐために、密度勾配超遠心法などの分泌小胞の精製法を検討する必要がある。
実験の進捗の都合により
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Medical Mycology
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