研究課題/領域番号 |
17K10042
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
中村 茂樹 国立感染症研究所, 真菌部, 室長 (20399752)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / 鼻咽頭クリアランス / マクロファージ / オートファジー / CCL2 |
研究実績の概要 |
肺炎球菌感染症の第一段階として、まず宿主の鼻咽頭に定着し局所で増殖することが必須である。これまでの研究で、肺炎球菌の鼻咽頭定着を制御する自然免疫のプレーヤーとして鼻粘膜局所のマクロファージが重要であり、またマクロファージは肺炎球菌を取り込みその細胞壁ペプチドグリカンを断片化し、細胞質に存在するNod2受容体で認識後、マクロファージ遊走性ケモカインCCL2産生が誘導されることで局所へ集積し鼻咽頭クリアランスが亢進することを明らかにしている。しかし、肺炎球菌を取り込んだマクロファージ内での分解機構とケモカイン産生のメカニズムについてはいまだ不明な点が多い。今回我々はマクロファージ内の肺炎球菌分解機構の一つとしてオートファジーに着目し研究を行なった。マウスマクロファージJ774細胞に肺炎球菌を接種3h後にタンパクを抽出し、抗LC3-I/II抗体によるWestern blottingで反応させたところ、肺炎球菌接種前と比較し接種後にLC3-I発現量の減弱とLC3-II発現量の増加が認められた。この現象はオートファジー阻害剤Wortmanninによって阻害されることが分かった。また、肺炎球菌接種後のJ774細胞を抗LC3抗体で蛍光染色し蛍光顕微鏡で確認したところ、肺炎球菌接種によってLC3発現量の増加が確認できた。さらに、肺炎球菌接種後のJ774細胞を透過電子顕微鏡で観察したところ、肺炎球菌菌体を取り込んだオートファゴゾ―ムと考えられる二重膜構造物の形成が確認できた。マクロファージ内のオートファジー形成に関与する菌体成分認識受容体を明らかにするため、Nod2欠損マウスより常在腹腔マクロファージを分離し、肺炎球菌接種後、タンパクを抽出し抗LC3-I/II抗体によるWestern blottingで確認したところ、LC3-I/IIともに発現量が低下していたことから、タンパク抽出不十分である可能性が考えられたため、今後は骨髄由来マクロファージを分離し同様の実験を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺炎球菌によるマクロファージ内でのオートファジー誘導性と、その誘導に関連するパターン認識受容体としてNo2の役割について明きらかにすることができている。またその他の肺炎球菌のパターン認識受容体としてTLR2, TLR4が挙げられるがこれらKOマウスの繁殖も順調に進み、骨髄由来マクロファージ採取の準備は整っている。さらに、肺炎球菌の主要病原因子であるニューモリシン欠損株についても作成済みであり使用可能な状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
NOD2, TLR2, TLR4 KOマウスより骨髄由来マクロファージを抽出し肺炎球菌接種後のオートファジー形成およびCCL2を含むサイトカイン/ケモカイン産生プロファイリングを確認する。またニューモリシン欠損株によるオートファジー誘導性についての評価も合わせて行なう。 さらにオートファジー必須遺伝子であるATG5/ATG7欠損マクロファージを作成し、肺炎球菌接種によるオートファジー形成への影響およびマクロファージから産生されるサイトカイン/ケモカインのプロファイリングの変化について解析を行なう。 最終的に、肺炎球菌を取り込んだ後のマクロファージによるCCL2産生と、オートファジーによる菌体成分の分解機構の関連性について明らかにする。
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