研究課題/領域番号 |
17K10053
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
伊達木 澄人 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (70462801)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高コレステロール血症 / 高シトステロール血症 / 黄色腫 |
研究実績の概要 |
A)日本人における高シトステロール血症例に対するABCG5/ABCG8遺伝子解析:原因不明の高コレステロール血症、ならびに血清シトステロール高値の小児例計24例を対象に遺伝子解析を行い、ABCG5変異例14例(homo1例、compound hetero 10例、hetero3例)、ABCG8変異例6例(compound hetero 5例、hetero1例), ABCG5, ABCG8の混合ヘテロ変異1例を同定した。変異陰性例3例のうち、LDLR遺伝子異常症(hetero)を1例同定した。これらABCG5/ABCG8変異陽性者における詳細な臨床的、分子遺伝学的解析の結果から以下のことを明らかにした。(1)p.R389H, p.R419H (ABCG5)とp.I419K(ABCG8)は、日本人におけるhot spot変異である。(2)両アリルに変異を有する症例では16例中14例に黄色腫を認めた。ヘテロ症例はすべて無症候性であった。(3) 同じ変異例でも重篤な合併症を有する例から高コレステロール血症のみの軽症例まで臨床像には差が認められる。(4) 乳幼児~小児例では、ヘテロ接合性変異症例でも著明な高コレステロール血症を呈する。 (5) 植物ステロール摂取が少ない乳児例では、高コレステロール血症を認めても、血清シトステロール値は高値にならない。 B)小児高コレステロール血症患者におけるシトステロール血症の頻度:48例の無症候性高コレステロール血症小児において2例にABCG5ヘテロ異常症を同定した(4.1%)。 C) 小児シトステロール血症に対する治療の実際と効果に関する研究:多くの症例においてコレスチラミド、もしくはエゼチミブの併用の治療によりコレステロールは速やかに正常化し、黄色腫は改善していたが、高シトステロール血症は正常化までは至っていない症例がほとんどであった。ただし上記治療中の児で動脈硬化性変化の進行を認めた症例はいない。今後、長期予後の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シトステロール血症における遺伝型―表現型の解析を行うために十分な患者解析数に至っている。今後も継続して検体の収集、解析を続け、さらに臨床像の検討、遺伝型との関連性について検討を行いたい。 当初、特定地域の健診データ、残余検体を用いて、一般成人におけるシトステロール血症の頻度を明らかにすることを計画していたが、高コレステロール血症を有する症例が極めて少なかったこと、残余血清が十分なかったことから現在解析は保留となっている。 今後、症例の蓄積とともに、現在のコホートの長期追跡を行い、シトステロール血症患者の自然歴、現行行われている治療の効果に対する検討を行いたい。また、若年性冠動脈疾患、成人高コレステロール血症の検体を集積し、ABCG5/ABCG8ヘテロ異常症が動脈硬化、心筋梗塞の発症リスクに関与するかを明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
1.シトステロール血症におけるABCG5/ABCG8遺伝子解析:現在の変異陽性例の臨床像、遺伝型をまとめて、論文投稿準備中である。また学会、研究会で積極的に現在までの成果を公表し、さらなる検体の収集、解析を行う。 2.小児無症候性高コレステロール血症におけるABCG5/ABCG8遺伝子異常の頻度:今後も継続して無症候性の高コレステロール血症小児患者の検体収集、解析を継続する。無症候性の高コレステロール血症の中には、早期から治療、管理が必要な家族性高コレステロール血症(ヘテロ)もこの中に含まれていると考えられる。今後さらなる解析を進め、小児高コレステロール血症の遺伝学的背景を明らかにしたい。 3.シトステロール血症に対する診療ガイドラインの作成:シトステロール血症に対する治療指針、診療ガイドラインは現在のところ存在しない。我々は、本邦における本症に対する治療の実態、効果をさらに検討し、適切な治療管理指針の作成を目指す。 4. 若年性冠動脈疾患におけるシトステロール血症の影響の検討:シトステロール血症に起因する若年性冠動脈疾患発症への関与を明らかにするため、若年性冠動脈疾患患者に対して血清シトステロール値の測定、ABCG5/ABCG8を含めた網羅的遺伝子解析を行う。これにより、同集団におけるABCG5/ABCG8遺伝子異常の関与の有無、頻度、ならびにシトステロール血症の遺伝的背景を明らかにする。若年性心筋梗塞はその頻度が稀であるため、対照検体数は、多く得られない可能性がある。長崎県下の成人患者を広く集めることができるよう、当院循環器内科と共同研究のうえ、研究を進める。シトステロール血症の若年性冠動脈疾患への関与が明らかとなれば、本症の早期診断、治療介入の有用性が明確となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大による研究計画変更のため。 使用計画:検体の収集、解析を続けるとともに、全国の施設と共同研究を行い、小児におけるシトステロール血症に対する治療の実態調査とその効果、安全性について検討する予定である。これらの成果について、情報収集、学会発表を行うとともに、論文としてまとめ、発信する予定である。
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