研究課題/領域番号 |
17K10054
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
城戸 淳 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (70721215)
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研究分担者 |
中村 公俊 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (30336234)
沼川 忠広 熊本大学, 発生医学研究所, 特定事業研究員 (40425690)
松本 志郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (70467992)
曽我 美南 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (80768002)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | iPS細胞 / ゴーシェー病 / ニューロン |
研究実績の概要 |
平成30年度は、ゴーシェー病II型患者由来のiPS細胞から樹立したNeural stem cell(NSC)を使用しての薬剤スクリーニングで効果のあると考えられた8種類の薬剤を候補にして、これらの薬剤作用後のNSC内のGlcSphの定量を行ったが、はっきりした効果が得られる薬剤は見つからなかった。ゴーシェー病II型患者由来NSCと正常者iPS細胞から樹立したNSCをNeuronに分化誘導し、両者間の神経についてカルシウムシグナルについて評価した。すでに、Fluo 4-AMを用いた細胞内のカルシウムシグナル伝達は、ゴーシェー病II型の患者由来NSCから分化させたNeuronにおいて、カルシウムシグナル伝達が正常者NSC由来のNeuronよりも亢進していることが確認できた。さらにカルシウムシグナル伝達の亢進について、カルシウムイオンチャンネルにフォーカスを充ててqPCRにて遺伝子発現の解析とウエスタンブロットは行った。NMDA型グルタミン酸受容体とAMPA型グルタミン酸受容体の発現は、ゴーシェー病II型の患者iPS細胞由来のNeuronでは、亢進していることが判明した。また、ゴーシェー病II型患者Neuronでは、開口放出能が低下していることが予測されるたが、シナプス前終末の機能や分泌現象の計測に活用されているFM1-43を使用して、実際に開口放出能が低下していることも確認できた。さらに、SNAP25やSyntaxin 1aなどのシナプス前終末の機能にかかわるSNARE COMPLEXの遺伝子発現が低下していることも確認できた。ゴーシェー病モデルマウスについては、B6 マウス(Gba flox/flox とGba flox/+-Nestin Cre/+との交配マウス)を 随時繁殖させ、ゴーシェー病の病態について、検討している最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定していた薬剤ライブラリーから有効薬剤としての治療薬候補があると考えられていたが、はっきりとしたものが現在見つかっていないため。
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今後の研究の推進方策 |
ゴーシェー病II型患者由来のiPS細胞(2検体:兄弟例)とゴーシェー病III型患者由来のiPS細胞の樹立とそのiPS細胞からのNeural stem cell(NSC)およびNeuron細胞の樹立はできた。ゴーシェー病II型患者由来のiPS細胞から樹立したNSCを用いて、lysosomal-associated membrane protein 1 (LAMP1) をマーカーにしながら1392種類の化合物についての薬剤スクリーニングを終えた。この中から、二次スクリーニングを終了した地点で、8種類の化合物にまで絞ることができた。この中から有効薬剤は見つけることができなかった。また違う評価系で候補薬を絞る。また、ゴーシェー病II型患者iPS細胞由来のNSCにおいて、グルコシルスフィンゴシン (GlcSph)が正常者のNSCよりも蓄積していることも確認できた。さらに、ゴーシェー病II型患者iPS細胞由来のNeuronでは、プレシナプス機能の低下とポストシナプス機能(カルシウムイオンの流入)の亢進が現象として証明できた。このプレシナプス機能の低下とポストシナプス機能(カルシウムイオンの流入)の亢進の原因についてさらに検討する予定である。生後2週間でけいれんを発症している神経型ゴーシェー病モデルマウスは獲得でき、現在、繁殖とともに表現型を解析中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費でかかる経費が予測できなかったため、必要な試薬の購入を控えていた。次年度に必要な抗体をできるだけ購入する計画を立てていたため、今年度の支出を抑え、次年度に予算を回す計画とした。
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