研究課題/領域番号 |
17K10057
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
山中 正二 横浜市立大学, 附属病院, 准教授 (80264604)
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研究分担者 |
山口 章 横浜市立大学, 医学研究科, 客員講師 (20381585)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ライソソーム蓄積病 / 炎症反応 / TLR4 / サンドホフ病 / GM2ガングリオシドーシス |
研究実績の概要 |
ライソゾーム病のひとつであるガングリオシドーシスは、中枢神経系に先天的に代謝できないガングリオシドが蓄積することにより、病態が進行すると考えられてきた。しかし、近年、自己抗体やその他何らかの原因により中枢神経系で引き起こされる炎症反応が病態の進行に深く関与していることが解明されたが、その詳細なメカニズムは未だ解明されていない。 本研究では、過剰に死細胞から放出された代謝されない糖脂質GM2, GA2がToll様受容体(TLR)を介して直接マイクログリア等を刺激することにより、中枢神経系での炎症反応を促進すると推測し、その詳細なメカニズムの解明とそのアンタゴニストを用いた治療法の開発を目的としている。 我々は、現時点でin vitroの実験で、WT mice (hexb+/+)、SD mice (hexb-/-)の中枢神経からマイクログリアを精製し、SD miceの中枢神経系で蓄積する糖脂質GM2, GA2を培養液中に添加し、刺激することで、TLR2, TLR4を介して、グリア細胞等を刺激し炎症性サイトカインTNF-αやIL-1βの産生を促すことを見出した。 現在、SD miceにTLR4のアンタゴニストとして知られているTAK-242を投与しており、投与による病態の解析、分子生物学的解析、病理学的解析を行い、その治療効果を検証する予定である。 これらの結果により、SDにおける中枢神経系の炎症反応は、神経細胞等のライソソームで代謝できない糖脂質が、アポトーシスなどにより細胞外に放出され、その結果放出された糖脂質がTLR4を介してマイクログリアを刺激することにより発症している事が解明されうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖脂質であるガングリオシドは細菌やウイルスのリポ多糖の疑似分子になり得ることが知られており、ギランバレー症候群の発症にはTLR4が関与している事が知られている。SDにおいても、遊離した糖脂質GM2, GA2がリポ多糖を認識するTLR2, TLR4に認識され、炎症反応等の免疫反応が引き起こされると推測される。これまで詳細な発症機序が解明されていなかったライソソーム蓄積病の中枢神経系の炎症反応に関しては、in vitroの系において、代謝できない糖脂質がマイクログリアを直接TLR4を介して刺激し、TNF-αなどの炎症性サイトカインの分泌を促すことを見出した。 このことにより、TLR2, TLR4のアンタゴニストを用いてシグナルカスケードを遮断することにより、中枢神経系での炎症反応が低減し、病態の進行が低減すると示唆され、現在、SD miceを用いて個体レベルでの研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのin vitroの研究結果から、SDにおける中枢神経系の炎症反応は、代謝酵素の異常により分解できない糖脂質が、その蓄積した神経細胞がアポトーシス等により細胞外に放出され、放出された糖脂質がマイクログリアのTLR4を介して刺激し、TNF-αの分泌を促すことにより、炎症反応が起きていると推察される。 TAK-242には、TLR4のシグナル伝達を阻害する低分子化合物である事が知られている。 これまで、我々や他のグループの報告では、蓄積物の増減に関係なく、炎症反応を低減させることにより、SD miceの病態が改善する事が報告されていることから、SDの病態の進行には中枢神経系への蓄積物の増加以外にも、炎症反応が深く関与している事が知られている。 我々は、TAK-242のSD miceへの投与により、TLR-4を介した炎症反応が低減すると推察している。 現在、SD miceにTAK-242を投与中で、病態の解析として寿命の解析、生育の解析、運動能の解析、分子生物学的解析として、TNF-αをはじめとする炎症性サイトカインの発現量の解析、病理学的解析として、マイクログリアの活性化、神経細胞の数や形態的観察等を行ない、その治療効果を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、SD miceにTAK-242を投与しており、病態の解析として寿命の解析、生育の解析、運動能の解析、分子生物学的解析として、TNF-αをはじめとする炎症性サイトカインの発現量の解析、病理学的解析として、マイクログリアの活性化、神経細胞の数や形態的観察等を行なっており、その治療効果を検証している。よって、それに生じるマウス飼育費、TAK-242および解析に必要な試薬類等、研究補助に対する人件費、研究成果の公表として論文投稿の費用を計画している。
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