研究課題/領域番号 |
17K10059
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研究機関 | 群馬パース大学 |
研究代表者 |
井埜 利博 群馬パース大学, 保健科学部, 客員教授 (60138261)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 受動喫煙 / 三次喫煙 / 尿中コチニン(UC) / PM2.5濃度 / 非侵襲的推測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、尿とPM2.5測定装置から得られたデータを分析することで、生活環境に存在するタバコ煙の濃度から小児の受動喫煙の影響度を非侵襲的に類推し、安心で健康的な生活を送るための大切な情報を得ることである。 研究開始から現在までに集積された症例数は23例である。 コントロールとして行った入院時計測において、尿中コチニン(UC)値は23例中3例が検出限界(1.3ng/mL)を超えていた。3例のUC値は2.0,1.9,1.6ng/mL、クレアチニン補正UC値は0.8,6.3,1.0(ng/mg/Cre)、平均UC濃度は1.8ng/mL、クレアチニン補正UC値は2.7ng/mg・Creであった。入院時計測における事前アンケート調査から、これら3例はいずれも保護者いずれか1名が喫煙者であり、うち1例は採尿日前日(病室内のPM2.5濃度計測日)に1日20本喫煙すると回答した。入院日翌日に機器設置とPM2.5濃度計測、翌々日に早朝尿を採取したが、入院施設では保護者いずれかの付き添いを要することから、保護者から患児への受動喫煙・三次喫煙による結果と推察された。 一方、自宅での計測において、尿中コチニン値は8例中2例が計測可能であり、平均UC濃度は2.2ng/mL、クレアチニン補正UC値は1.8ng/mg・Creであった。うち1例は両親とも非喫煙者であったが、自宅で居酒屋を経営しており、店舗内は喫煙可能であった。また、営業中も被験者が自由に自宅と店舗を行き来する状況であったことから、受動喫煙が容易に成立する環境であった。また、もう1例は室内で加熱式タバコを1日6本喫煙した例であったが、喫煙後のPM2.5は最大35カウント/分であり、0カウントに戻るまで約3時間を要した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の目的を達成するため、生活環境下におけるタバコ煙濃度をPM2.5濃度を用い計測しているが、昨今の喫煙環境の急激な変化、具体的には被験者家族に喫煙者が想像以上に少ないこと、また、アンケート調査の結果を踏まえると加熱式タバコの急速な普及により、仮に室内喫煙していても尿中コチニンを検出することが困難であると言った問題に直面し、検出限界以上のUC値を採取に苦慮している。 研究代表者である医師が回診時に研究の概要を説明し、その後、研究協力者が別途病室を訪問して研究目的等を詳細説明する形をとっているが、急性疾患(呼吸器疾患)での受動喫煙曝露を非侵襲的に検討するため被験者選定を行った結果、想定される入院期間の短い患児が大多数であった。そのため、入院直後の容体不安定な場面に研究目的等説明しなければいけないため、研究同意取得に苦慮している。さらに、2019年末から現在にかけて流行するCOVID-19に伴い、研究目的への理解は得られても自宅訪問の了解が得られないケースが大半となっており、今後も流行の収束に時間がかかることが想定される中、症例数の更なる収集には相当の困難が予想される。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19終息と新しい生活様式への移行が進む中、研究への理解・同意を得ることに困難が予想されるため、症例集積期間延長を検討するとともに、引き続き、本研究への理解と同意を得るため、対象となる患児・保護者への働きかけを行い、症例数集積に務める。具体的には、入院時計測に対象となる施設職員の協力を得て、入院施設職員以外の出入りを極力押さえ、患児・保護者のCOVID-19罹患リスクと心理的ハードルを下げる努力を行う。また、家庭環境の調査訪問時は極力短時間で退出できるよう、計測機器や諸物品・アンケート調査票等を事前に消毒する等対策を図る。 それでも研究推進に困難が予想されるため、研究期間(症例集積対象期間)延長はじめ、円滑な研究推進を図れるよう善処する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【現在までの進捗状況】の通り症例数の収集に苦慮しており、また、尿中コチニン検査依頼先より、令和2年1月末から検査一時受諾中止との連絡を受けていることもあり、尿中コチニン検査費用や謝礼等の支出がなかった。症例集積対象期間延長はじめ、新たな測定機器購入等も検討し、円滑な研究推進を図れるよう進めていきたい。
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