研究課題/領域番号 |
17K10061
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
宮下 俊之 北里大学, 医学部, 教授 (60174182)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Gorlin症候群 / iPS細胞 / CRISPR/Cas9システム |
研究実績の概要 |
NBCCS由来iPS細胞を樹立し、遺伝子編集により残る正常アレルを破壊した細胞を作製しそれらの細胞生物学的特性を解析した。NBCCS患者由来iPS細胞(PTCH1+/- iPSCs)にCRISPR/Cas9発現ベクターをエレクトロポレーション法により導入してクローンを単離後、患者由来の変異アレルに加えて、残存する正常アレルにも変異を生じたiPS細胞を得た(PTCH1-/- iPSCs)。作製したiPS細胞について増殖能をMTTアッセイで、SHHシグナル伝達系標的遺伝子の発現量をqPCRで解析した。また、これらのiPS細胞を免疫不全マウスの皮下に移植して得られたテラトーマについて病理組織学的な解析を行った。PTCH1-/- iPSCsではPTCH1+/- iPSCsと比べて増殖速度が増加した。また、PTCH1-/- iPSCsはPTCH1+/- iPSCsよりもPTCH1、GLI1、HHIP1などのSHHシグナル伝達系標的遺伝子の発現量が上昇していた。これらのことから、作製した iPS細胞ではPTCH1両アレルを欠損することでSHHシグナル伝達系が亢進し、GLIが恒常的に活性化していると考えられた。作製したPTCH1-/- iPSCsを免疫不全マウスに移植して得られたテラトーマはPTCH1+/- iPSCsから形成したテラトーマに比して成熟した組織が減少しており、未熟型であった。さらに、PTCH1+/- iPSCsから形成したテラトーマに比べて神経系細胞などの外胚葉組織を多く含み、骨などの中胚葉組織が少ないといった特徴が認められことから、今回得られたテラトーマでは外胚葉への分化が誘導されていたことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作製したPTCH1+/- iPSCsとPTCH1-/- iPSCsを免疫不全マウスに移植して奇形腫を作製し、その病理学的解析が進行中である。HE染色に加え、三胚葉のマーカーを用いて免疫組織化学染色を行い、PTCH1-/- iPSCs はPTCH1+/- iPSCsから形成したテラトーマに比べて神経系細胞などの外胚葉組織を多く含み、骨などの中胚葉組織が少ないといった特徴が認められることが明らかとなった。また細胞増殖マーカーの染色からは、より細胞増殖が促進されていることも示された。 以上の点より、研究はおおむね順調に経過していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
奇形腫の形成が既知のヘッジホッグ阻害剤で抑制されることが示されれば、未知のヘッジホッグ阻害剤のスクリーニングへの道が開けるが、多種類の低分子薬剤をスクリーニングするにはより簡便な方法を樹立する必要がある。 更に、Gorlin症候群に好発する腫瘍に基底細胞癌がある。今回解析した奇形腫のなかにはそれに類似する部分は認められなかった。今後iPS細胞をケラチノサイトに分化させる培養法を確立し、紫外線等で癌化させる試みを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していたiPS細胞の培養にかかる経費が当初より少なかったため次年度使用額が生じた。一方、2019年度はiPS細胞の培養に当初の計画より多額の経費(主として培地類)が必要になる。
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