研究課題/領域番号 |
17K10063
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
森島 正恵 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00241068)
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研究分担者 |
森川 俊一 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70339000) [辞退]
北原 秀治 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (40510235)
清水 一彦 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90385394)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝子・先天性疾患 / 遺伝子改変マウス / 細胞系譜 / 心血管発生 / 肺発生 / Foxc2遺伝子 / 間葉系細胞 |
研究実績の概要 |
フォークヘッド転写因子の一つであるFoxc2 遺伝子はリンパ浮腫を伴う疾患の原因遺伝子候補とされている。我々はFoxc2ノックアウト(KO)マウスの心大血管奇形および肺成熟異常との関連性について解析を行い、本遺伝子欠失マウスの肺の発生過程において肺胞上皮の分化の異常とリンパ管形成の異常を呈すること、および器官形成期における肺間葉系細胞でのLef1遺伝子発現が有意に低下することを見出し報告した。しかしながら、Foxc2遺伝子は発生過程のほぼ全ての間葉系細胞で発現するため、従来のCre-loxPを用いた細胞系譜解析、および時期特異性の情報を得ることが困難である。このため、Tamoxifen(TAM) 誘導性Foxc2-Cre (Foxc2-CreERT2)マウスの分与を受け解析を勧める運びとなったが、平成29年度に予定していた凍結保存の搬入と個体の生産が遅れた。 本年度では、凍結胚により搬入されたFoxc2-CreERT2; R26R-LacZ個体を用いた研究環境の整備、即ち他系統への戻し交配を含む繁殖継代コロニーの確立を行い、戻し交配過程で得られた個体を用いた解析手技の確立を中心に、TAM投与により胎齢時期をずらしてFoxc2遺伝子をノックアウトし、ミュータント系における心大血管系の表現型変異の確認を行った。また、Foxc2 ミュータントマウス胚子の鰓弓を用いて、発現遺伝子動態の解析を目的としてRNAシークエンスを行い、Foxc2ヘテロ個体とFoxc2欠失個体における発現遺伝子の比較解析をすすめている。また、Foxc2+/-においても眼球脈絡膜毛細血管板などの血管系の形態異常が確認されているため、今後、感覚器の発生まで対象を広げての解析を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Foxc2-CreERT2マウスの搬入の遅延(腸管内原虫汚染による個体搬入が不可能)により、当初の予定よりもほぼ一年分、研究の進行が遅れている。しかし、凍結胚によるマウス搬入完了により、本年度は継代コロニーの確立を進めた。我々はFoxc2遺伝子欠失胎仔の表現型で系統差を見出していることから、分与されたC57BL/6 (B6)マウス以外に、ICRおよび129xBlack Swiss 系のバックグラウンド個体が解析に必要であり、現在も戻し交配を進めている。この過程で得られた交雑個体を用いて、①TAM感受性の系統差の有無、投与ステージについての確認を行った。また、X-gal染色手技の確認と同時にR26Rヘテロ個体とホモ個体におけるシグナル発現の差についても確認を行った。さらに②咽頭弓器官分化におけるFoxc2遺伝子発現と表現型の関係の確認する目的で、時期特異的にFoxc2遺伝子を欠失させた胎仔の心大血管の形態解析を行い、大血管異常形態を発現する時期が胎齢6-7日の可能性が示唆されている。③肺発生を中心とする器官形成期におけるLef1 関連遺伝子(canonical Wnt signaling)については、関連遺伝子候補が多かったため、胎齢10.5日Foxc2 KO マウスの鰓弓部位のRNAシークエンスを行い、現在、データの解析を進めている。①-③のデータをもとにした器官形成期胚子の画像解析手技の検討 (分担者北原が担当)については、戻し交配過程の交雑種のためデータ収集は遅れている。しかしながら、最終目的とするFoxc2+細胞の細胞系譜とクローン解析にむけて、戻し交配によりICR、129xBlack SwissおよびB6の3系統の継代化が進んでいる為、次年度での試行が期待できる状態となっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ICR系はF5、129xBlack Swiss交雑系はF4まで戻し交配が進んでいるため、系統差を考慮した正規のデータ収集がほぼ可能となってきている。本年度は、Foxc2遺伝子欠失時の心大血管系における表現型の系統差を踏まえ、①心大血管系におけるFoxc2+間葉系細胞の細胞系譜の比較解析をB6系、ICR系、129xBlackSwiss交雑系において行う。また、②RNAシークエンス解析のデータをもとに、顕著な変化の見られた遺伝子について、器官形成期のFoxc2欠失時のLef1 関連遺伝子(canonical Wnt signaling)発現について、その発現動態の詳細と発現部位の特定を、鰓弓器官および肺発生を中心に、前者はqPCR、後者は免疫染色法を用いて確認する。さらに、①②での結果を発展させるため、最終的には③クローン解析を目指している。即ち、Foxc2-CreERT2; R26R Confettiマウスを用いた心大血管および肺組織分化にあたるFoxc2+間葉系細胞数(=量)と胎齢の関係について、Foxc2欠失個体も合わせて解析を行い、間葉系細胞の遊走能とFoxc2遺伝子発現について検討し、大血管および肺組織、さらには感覚器も含めて、発生過程におけるFoxc2+細胞の細胞系譜の詳細を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定に組み込んでいたマウス搬入費用が、学内で凍結保存胚の仮親への移植可能な施設ができ、専門業者への依頼が不要になったことから、大幅に予定額を下回った。また、搬入された系がFoxc2-CreERT2: R26R-LacZダブルミュータントで、十分な個体数を凍結胚より得ることができたため、R26R-LacZレポーターマウスの追加購入も不要となった。 繰り越し分は、免疫組織学解析に必要な抗体および蛍光色素マーカー遺伝子を組み込んだレポーターマウスなどの購入に充てる予定である。
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