糖原病III型(glycogen storage disease type III: GSDIII)のグリコーゲン脱分枝酵素(glycogen debranching enzyme: GDE)活性低下が臨床像に与える影響を検討している。GDEをコードする遺伝子がAGLである。2019年度に得られた結果は以下の通りである。 1.日本人患者の遺伝子解析を行い、二つの異なるAGL遺伝子変異の複合ヘテロ接合体であることを明らかにした。2例とも複合ヘテロ接合体であり、これまでに報告のないAGL変異を2つ同定した。また、IVS32-12 A >G変異があった。 2.日本人患者の長期追跡に、肝細胞癌が新たに発生した。 肝硬変を基礎に、中年以降に発生しており、IVS32-12 A >G変異を有していた。長期予後改善のためには、肝硬変への進行を抑制する必要がある。 AGL変異IVS32-12 A >Gは、私どもが日本人で1998年に報告したスプライシング変異で、その後様々なエスニックグループで診断され、世界各地から報告されている。臨床的には、筋症状がなく(あるいは軽度で)肝機能障害が主体である亜型である(この原因としては、筋組織ではスプライシンがある程度正常に行われて、酵素活性が残存していることが考えられている)。 この亜型の長期予後はまだ十分にあきらかでない。この亜型でも肝障害が進行して肝硬変となり、肝癌発生の原因になっていた。発がんが患者の長期予後を左右するので、定期的な肝臓の画像評価(エコー、造影CT)が重要である。
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