研究課題/領域番号 |
17K10067
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研究機関 | 一般財団法人脳神経疾患研究所 |
研究代表者 |
衞藤 義勝 一般財団法人脳神経疾患研究所, 先端医療研究センター, センター長 (50056909)
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研究分担者 |
柳澤 比呂子 一般財団法人脳神経疾患研究所, 先端医療研究センター, 研究員 (60416659)
WU CHEN 一般財団法人脳神経疾患研究所, 先端医療研究センター, 研究員 (90790840)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ライソゾーム病 / iPS細胞作製 / ゴーシェ病 / ファブリ病 / NPC病 / タンデムMS / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
ライソゾーム病患者血清、乾燥ロ紙血(DBS)、iPS 細胞由来標的細胞を用いてHPLC/ タンデムマス,Q-TOF マスによる新らたなバイオマーカーの探索と病態解明、診断、治療選択肢へ の応用に関して、各種ライソゾーム病の内、現在酵素補充療法(ERT)或いは基質合成抑制治療を治療しているゴーシェ病(GD)、ファブリ病(FD)、ニーマンピックC病(NPC)等のライソゾーム 病を中心に血清、或いは乾燥ろ紙血(DBS)を用いて、疾患特異的バイオマーカー、LysoGb1, LysoGb3, 7-ketocholesterol(7KC)をタ ンデム質量分析器(MS/MS)を用いて測定法を樹立した。又病態との関連、患者の診断並びに薬剤の効果を検討した。特にGD,FDではERTにより、血清lysoGb1 & lysoGb3は低下するが、酵素に対する抗体が高い患者ではこれらバイオマーカーの低下は少ない。NPC患者血漿では7KCは高値であるが、ミグルスタツトでの治療では臨床症状は悪化しないが、7KCのバイオマーカーは低下しない。又NPC患者由来のiPS細胞から神経前駆細胞に分化させ、さらに大脳皮質神経細胞に分化、これらバイオマーカーの増加が神経細胞で蓄積しているかを検討中である。神経細胞を用いて、健常人由来iPS細胞とNPC患者由来iPS細胞を比較し、分子動態、オートファージ、ミグルスタツトの治療効果なども検討する予定である。ゴーシェ病、Fabry病患者由来の繊維芽細胞から、RNAのリプログラミング法を用いてiPS細胞を樹立、正常皮膚繊維芽細胞からのRNAリプログラミング化には成功している。さらに、神経堤細胞を介して、末梢神経に分化させ、Fabry病患者の痛みに対する薬剤や因子をスクリーニングし、治療との効果判定を各種バイオマーカーを用いて検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)タンデムMSを用いての血清、血漿でのlysoGb1, lysoGb3、7KCの測定に成功している。ゴーシェ病ではlysoGb1血清、血漿、DBSで10倍以上増加している。 本研究では酵素補充療法施行患者は明らかにlysoGb3は低下するが、しかし正常値までは低下しないことが解明され、酵素補充療法の限界も見られた。又酵素治療に対する抗体陽性患者ではlysoGb3はやや低下するが、陰性患者ほどは低下しないことが明らかにされた。NPC患者の血漿7KCは正常の2-10倍以上の増加があり診断にはリゾスフィンゴミエリン(LysoSM)と合わせて測定することにより、NPCの診断には有用であることを明らかにした。2)RNA法によるiPS細胞作製とNPC、ファブリよりのiPS細胞からの神経細胞への分化並びにバイオマーカー研究-本研究では、ライソゾーム病とオートファジー不全との関係を明らかにし、ライソゾーム病患者由来のiPS細胞を用いて、治療薬効果の検証や新たな治療薬の開発を目指す。また、熊本大学江良教授より分与いただいたNPC患者由来のiPS細胞から胚様体を形成させた。現在、神経前駆細胞に分化させている過程である。さらに、RNAのリプログラミングを用いたiPS細胞作製に着手し、健常人の繊維芽細胞より、iPS細胞を樹立した。iPS細胞を用いた研究計画は31年度からの研究遂行予定としており、初年度からの研究実施により、大きな成果が期待できる状況である。RNAを用いたリプログラミングは、よりES細胞に近い自然な未分化状態を保てる方法であり、治療薬の創薬開発に有用と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
NPC患者由来のiPS細胞から神経前駆細胞に分化させ、さらに大脳皮質神経細胞に分化させる予定である。神経細胞を用いて、健常人由来iPS細胞とNPC患者由来iPS細胞を比較し、分子動態やシグナリングの異なる特定の分子を選択し、治療薬に結びつく因子を探索する。また、Fabry病患者由来の繊維芽細胞から、RNAのリプログラミングを用いてiPS細胞を樹立する予定である。さらに、神経堤細胞を介して、末梢神経に分化させ、Fabry病患者の痛みを和らげる薬剤や因子をスクリーニングする予定である。同時にNPC,ファブリ病iPS細胞から樹立した神経細胞の病態をタンデムMSによりプロテオミクス、或いはlysoGb3, 7KC, LysoSMなどのバイオマーカーを測定し、神経細胞での病態代謝の異常を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、タンデムマスを用いたバイオマーカー探索において、ニーマンピック病C型の新たなバイオマーカーとして、リゾスフィンゴミエリン(LysoSM)を見出した。さらにファブリ―病についてもLyso-Gb3に合わせて他の新たなバイオマーカーを現在検討中である。今年度は、プロテオミクス解析において、新たなバイオマーカーを検証予定である。この検証のためには、タンデムマスで使用する新たな国際基準の標準液の購入が不可欠となる。拠って、予算の増額を計上した。 また、RNAを用いたリプログラミングによるiPS細胞樹立が順調に遂行されている。RNAリプログラミングは、低酸素状態で培養するという新しい方法であり、RNAリプログラミングによるファブリー病患者由来iPS細胞樹立のために、予算増額が必要となった。計画としては、今年度前半までにファブリー病患者由来iPS細胞樹立し、今年度中に神経堤細胞に分化する予定である。
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