研究課題
[目的]チアミントランスポーター(SLC19A3)は、膜を6回貫通する膜貫通型タンパク質であり、特に小腸上部の微絨毛の刷子縁に多く発現しており、摂取したチアミンの体内への取り込みに重要な役割を行っている。SLC19A3欠損症(THMD2; OMIM 607483)は常染色体劣性疾患で、その変異の種類により、乳児期に発症する重症の症例から青年期に発症しウエルニッケ様症状を呈する軽症の症例まで様々な症状が見られる。本年度は、本欠損症の脳の病態を改善し、治療薬の候補となる薬剤の同定を行った。[方法]チアミン制限餌で飼育したSlc19a3遺伝子のホモ欠失マウス(以後、KOマウス)の脳を免疫組織学的手法を用いて継時的に解析を行った。チアミン制限食を開始すると同時に、1)活性酸素の増加を防ぐN-アセチルシステイン(NAC)、2)ミクログリアの活性化を防ぐミノマイシンと3)保護的ミクログリアを活性化するエクセンディン-4(Exendin-4)の3薬剤の投与を別々に行った。3薬剤の投与を5日間継続して行った後に、4%PFAにて灌流固定して脳を摘出した。視床を含む組織のパラフィン切片を作製し、H&E染色、Klüver-Barrera染色と各種免疫染色(NeuN、TUNEL、GFAP、Iba1、ICAM1)を行った。[結果と考察] ミノマイシンとEx-4投与群では、無処理のKOマウスと同様に、視床にNeuN陽性細胞脱落、GFAP陽性細胞とIba1陽性細胞の増加、ICAM-1陽性血管増生が見られた。しかし、NAC投与KOマウスでは上記の脳病理所見が減少し、NACはチアミン制限による脳病態の増悪を抑制できていると考えられた。以上より、NACは、SLC19A3欠損患者の急性期の脳病変を保護する可能性が示唆された。
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