研究課題
言語遅滞児に対し、言語機能発達段階を脳磁図によって検討し定量化・比較を行う為に、昨年度に引き続き5名の患児に対して、複数回の検討を行なった。北海道大学病院に設置されている306ch脳磁計を使用し、独自に開発した文字情報混合装置を用いて、患児の好む任意のDVD画像に文字情報を組み込み、これを約10分間の時間を単位として約40分間視聴することによって、文字刺激を行った。刺激情報は、遠距離焦点の強化プロジェクターを用いて眼前に置いたスクリーンに直接投影し、この画像を患児に見せた。言語刺激に対する、事象関連脱同期反応を検討した。独自に開発した、Matlab toolを用いた、解析ソフトウエアを用いて、任意の時間範囲、周波数、脳の部位における、事象関連脱同期反応を、図示した。この検討の上で、ヒトの基本的な基礎活動である、10Hz帯域の基礎活動(α律動)周辺の5~15Hzの基礎活動に特に注目した。経年的変化を観察している急性脳症後に言語を獲得しつつある患児、Angelman症候群で発語はないものの、言語理解が進んでいる兄弟例、先天性筋症で発語はないものの言語理解が予想される患児に関して、検討を行なった。言語優位半球の分化が得られてくるのではとの予想を立てていたが、急性脳症後の11歳患児(脳症罹患後10年)において、左半球優位の、10Hz帯域における有意な事象関連脱同期が見出されるようになった。他の症例に関しては、まだ、両側性の反応があるが、検査に順応して来たため、安定した結果が得られるようになった。今後も、縦断的な研究の継続が望まれた。
2: おおむね順調に進展している
研究の進捗により、言語発達過程において言語優位半球が決定される前に、両側大脳半球が連関して活動し、両側性の活動を示す可能性がある事を、また、本研究で用いている刺激は、片側性だけでない刺激応答を示す事が示された。本研究の成果を、第45回日本臨床神経生理学会にて発表した。本研究の進捗を踏まえ、論文作成を行なう予定である。
引き続き、追跡を行なっている患児に関して、言語機能獲得のプロセスを追跡していく。正常対照被験者のデータを蓄積し、年代階層別の刺激応答傾向を蓄積していく。言語遅滞患児に関して、新規の被験者を募り、データの蓄積を行なっていく。また、言語訓練における到達目標を提示できることを目指す。
次年度に、大型の機器を購入する予定があったため、次年度に持ち越した。
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