研究課題/領域番号 |
17K10076
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
窪田 拓生 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (40629135)
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研究分担者 |
道上 敏美 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 環境影響部門, 部長 (00301804)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 小児内分泌学 / 小児骨代謝学 |
研究実績の概要 |
くる病は骨・軟骨石灰化障害を特徴とし、その原因としてはビタミンD欠乏やリン欠乏などがある。また、アルカリホスファターゼ(ALP)欠乏によっても骨のくる病様変化が生じる。ALPの役割は、石灰化抑制物質であるピロリン酸を分解し、石灰化局所でリンを産生することと考えられているが、その局所におけるリン産生の意義は不明である。また、くる病における血清ALP値増加の意義については明らかではない。そこで、低リン血症性くる病をモデルとして、骨の石灰化におけるALPによる局所でのリン産生の意義を明らかにし、骨石灰化障害に対する新たな治療法の開発につなげることを目的とする。 骨芽細胞株SaOS2を用いた石灰化誘導実験において、石灰化促進、骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現上昇を認めた。ピロリン酸濃度の測定を確立した。分化培養ではピロリン酸濃度は維持培養(非分化培養)に比べて低下していた。分化培養におけるALP活性、リン濃度は、維持培養に比べて上昇していた。ALP阻害薬によるALP活性抑制効果は部分的であった。ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の培養を開始した。 低ホスファターゼ症(HPP)患者由来皮膚線維芽細胞を用いてiPS細胞を作製した。ゲノム編集技術を用いて、HPPの原因遺伝子であるALPL遺伝子の片アレル変異修復を行った。HPP患者由来iPS細胞ではALP活性および石灰化を認めなかったが、変異修復iPS細胞ではALP活性は上昇し、石灰化も促進した。また、分化誘導後、骨芽細胞分化マーカーの発現も増加していた。 X連鎖性低リン血症性くる病(XLH)の患者では、血清25水酸化ビタミンD[25(OH)D]濃度 > 15 ng/mLの症例では、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)と25(OH)Dとの間に負の相関を認めた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨芽細胞株SaOS2細胞の分化培養2週目から石灰化(アリザリンレッド染色)を認めた。ALP、COL1A1、OCN遺伝子の発現上昇(qPCR)を認めた。ピロリン酸濃度の測定を確立した。分化培養1週目以降ではピロリン酸濃度は維持培養(非分化培養)に比べて低下していた。分化培養におけるALP活性は、分化培養1週目以降、維持培養に比べて上昇していた。リン濃度も分化培養において増加していた。ALP阻害薬(levomisoleもしくはCAS 496014-13-2)を添加すると、部分的に、分化培養におけるリン濃度、ALP活性は低下し、ピロリン酸濃度は上昇した。ALP阻害薬は石灰化も部分的に抑制した。SaOS2細胞ではALP阻害薬によるALP活性抑制が十分ではないため、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBM-MSC)の培養を開始した。 HPP患者由来皮膚線維芽細胞を用いてiPS細胞を作製した。Transcription Activator-Like Effector Nuclease (TALEN)を用いてHPPの原因遺伝子であるALPL遺伝子の片アレル変異修復を行った。HPP患者由来iPS細胞ではALP活性および石灰化を認めなかったが、変異修復iPS細胞ではALP活性は有意に上昇し、石灰化も促進した。また、分化誘導後、骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現も増加していた。 X連鎖性低リン血症性くる病(XLH)の12例中7例で血清25(OH)D濃度が20 ng/mL未満であり、ビタミンD欠乏を伴う症例は少なくなかった。25(OH)Dの重回帰分析では、明らかな影響を与えるパラメータは同定できなかった。25(OH)D > 15 ng/mLのXLH症例では、FGF23と25(OH)Dとの間に負の相関を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
hBM-MSC細胞の骨芽細胞分化誘導を行って、まず、石灰化を検討する。その後、分化誘導群と維持培養群間で、ピロリン酸濃度、ALP活性、リン濃度、遺伝子発現を比較検討する。遺伝子発現は骨芽細胞・骨細胞関連遺伝子に加えて、ピロリン酸代謝に関わるNPP1、ANK、ALPが関与しているPurinergic signaling関連遺伝子の発現も検討する。また、ALP阻害薬によってALP活性が十分抑制できるかどうかを検討した上で、ALP活性抑制による上記への影響を検討する。 片アレル遺伝子変異修復したiPS細胞をCRISPR/Cas9システムを用いて、変異修復を行い、両アレル変異修復されたHPP由来iPS細胞を作製する。HPP患者由来iPS細胞、片アレル変異修復iPS細胞、両アレル変異修復iPS細胞を用いて上記の検討を行う。 上記のhBM-MSC細胞、iPS細胞の実験において、石灰化におけるピロリン酸、リン、ALP活性の重要性を検討する。必要に応じて、ピロリン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムを添加し、ピロリン酸、リン酸濃度を調整しながら、それらの石灰化への影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
SaOS2細胞に対するピロリン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムの添加実験が施行できなかったため、翌年度にSaOS2細胞やヒト骨髄由来間葉系幹細胞を用いて行う。片アレル遺伝子変異修復したHPP由来iPS細胞を用いた両アレル変異修復されたHPP由来iPS細胞を作製できなかったために、翌年度に作製する。
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