研究課題
くる病は骨・軟骨石灰化障害を特徴とし、その原因としてはビタミンD欠乏やリン欠乏などがある。また、アルカリホスファターゼ(ALP)欠乏によっても骨のくる病様変化が生じる。ALPの役割は、石灰化抑制物質であるピロリン酸を分解し、石灰化局所でリンを産生することと考えられているが、その局所におけるリン産生の意義は不明である。そこで、骨の石灰化におけるALPによる局所でのリン産生の意義を明らかにし、骨石灰化障害に対する新たな治療法の開発につなげることを目的とする。ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を用いた石灰化誘導培養実験において、石灰化促進、骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現上昇を認めた。骨芽細胞分化培養条件下では、培養液中のリン濃度、ピロリン酸濃度、リン/ピロリン酸濃度比の経時的上昇、培養細胞のALP活性の経時的上昇を認めた。培養液中のリン濃度を一定にするために、分化培養条件において、βグリセロリン酸の代わりにリン酸ナトリウムを添加した。リン酸ナトリウムにおいて、βグリセロリン酸と比較して、石灰化、ALP活性上昇、ピロリン酸の推移、骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現に明らかな差を認めなかった。ALP阻害薬を添加すると、ALP活性低下、リン/ピロリン酸濃度比の低下、石灰化抑制が認められた。また、分化培養条件下にピロリン酸を添加すると濃度依存的に石灰化を抑制した。リン濃度は変化しなかった。分化培養初期の骨芽細胞分化マーカーの発現は、βグリセロリン酸に比べてリン酸ナトリウム添加によって上昇したが、ピロリン酸の同時添加によってその上昇は抑制される傾向が見られた。骨芽細胞による石灰化においてリン/ピロリン酸濃度比が重要である可能性が示唆されたが、今後、リン、ピロリン酸によって発現調節される遺伝子やその調節機構を明らかにしていく必要がある。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Clinical Pediatric Endocrinology
巻: 29 ページ: 9~24
10.1297/cpe.29.9
Calcif Tissue Int
巻: 106 ページ: 221-231
10.1007/s00223-019-00626-w
PLOS ONE
巻: 14 ページ: e0222931
10.1371/journal.pone.0222931
Osteoporos Int
巻: 30 ページ: 2333-2342
10.1007/s00198-019-05076-6
Molecular Genetics and Metabolism
巻: 127 ページ: 158~165
10.1016/j.ymgme.2019.05.014
Journal of Bone and Mineral Research
巻: 34 ページ: 2183~2191
10.1002/jbmr.3843
巻: 105 ページ: 271-284
10.1007/s00223-019-00568-3