研究課題/領域番号 |
17K10077
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
西尾 久英 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (80189258)
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研究分担者 |
篠原 正和 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80437483)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脊髄性筋萎縮症 / SMN1遺伝子 / SMN2遺伝子 / スプライシング / イントロン・リテンション |
研究実績の概要 |
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、SMN1遺伝子異常によって生じる運動ニューロン病である。分子遺伝学的研究から、SMN2遺伝子のコピー数が多いほどSMAは軽症化することが明らかになり、SMN2遺伝子の発現促進を目指して、治療薬の開発が進められてきた。私たちは、1995年より、SMN1遺伝子、SMN2遺伝子に関して、診断と治療法開発の研究をおこなってきた。今回の研究プロジェクトは、これまでの研究を発展させて、選択的スプライシングを制御し、人為的にイントロン・リテンションを生じさせる技術を応用した脊髄性筋萎縮症の新規治療法の開発を企図するものである。 2017年度は、対照線維芽細胞とSMA線維芽細胞を用いて、イントロン2bを含む転写産物を解析した。私たちは、イントロン2bを含む転写産物は、SMN1遺伝子、SMN2遺伝子の双方から産生することを明らかにし、その局在は核内に制限されていることを示した。また、イントロン2bを含む転写産物は、その塩基配列の中にナンセンス・コドンを含んでいるにも関わらず、ナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)システムの標的とはならないことを示した。しかし、イントロン2bを含む転写産物に由来するタンパクは検出できなかったことより、この転写産物の機能はタンパク合成ではないと考えられた。 2018年度は、SMA線維芽細胞を用いて、イントロン7のリテンションを誘導する実験を行った。イントロン7のスプライスドナーサイトを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドをトランスフェクションしたところ、イントロン7のリテンションは誘導されずに、かえってエクソン7の受容、イントロン7の排除が進んだ。この現象の基盤にある分子機構についてはいまだ不明である。 SMAの新生児スクリーニングについては、全国の産科・新生児科の協力を得て、パイロット研究を推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私たちの実験で、SMN2遺伝子(あるいはSMN1遺伝子)のエクソン7とイントロン7の境界のスプライスコンセンサス配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドが、スプライシングの効率を低下させない、それどころかスプライシングの効率を上げることが明らかになった。このことは、何回実験を繰り返しても同じ結果が得られていることから、偶然得られた所見ではない。予想外の、しかも再現性のある所見である。現時点で、この所見をうまく説明できないが、SMAの治療法の開発に直結するものであるのは確かである。研究の進展が楽しみである。
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今後の研究の推進方策 |
(1)2019年度は、前年度に引き続き、SMA線維芽細胞を用いて、SMN2遺伝子(あるいはSMN1遺伝子)のイントロン7のリテンションを誘導する実験を行う。イントロン7のスプライスアクセプターサイトを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドをトランスフェクションし、イントロン7のリテンションは誘導されるかどうかを検討する。 (2)SMN2遺伝子(あるいはSMN1遺伝子)エクソン7のスプライシングにおけるスプライシング・コンセンサス配列の貢献の程度を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
<次年度使用額が生じた理由> 神戸大学から神戸学院大学に異動し、新たに研究室を立ち上げて、研究をスタートしたが、いまだ本格的に稼働しているとは言えない状況である。そのため、機器、試薬の購入額が少なく、次年度使用額が生じた。 <使用計画> いまだ、研究室の状況は完備したとは言えず、今年度も、機器、試薬を購入し続ける必要がある。
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