研究課題
傍シルビウス裂症候群は大脳のシルビウス裂周辺の脳形成異常や機能異常を呈する難治性疾患である。知的障害、運動発達の遅れ、重度のてんかんなど引き起こす。本研究は日本人の本疾患コホートに対して次世代シーケンサーを駆使した包括的なゲノム解析を行って、本疾患の責任遺伝子の同定と病態解明を目的とする。本年度は90家系に対して、合計171サンプルの全エクソーム解析を行った。全エクソン分画を抽出したあとIllumina社のHiSeq2500/2000を用いて網羅的な配列解析を実施した。取得したデータは教室で構築したデータ解析パイプラインを用いて処理し、遺伝子のコーディング領域を中心に、塩基置換、微小欠失や挿入配列変化、もしくはコピー数異常などを検索している。2018年に傍シルビウス裂症候群を引き起こす新規の疾患責任遺伝子の変異をもつ1例が報告された。1例報告であったため、その病原性を確定するには続報が待たれる状況であった。本研究のコホートでも同一遺伝子の変異例が複数あり、その臨床症状も類似していた。このことは本遺伝子が疾患を引き起こしていることが確定できる重要な所見であり、論文投稿した。そのほか、いくつか新規疾患責任遺伝子の候補と考える所見を見だしている。これらの確定のために、同一遺伝子に変異をもつ症例を集積し、その臨床症状を評価し、また機能解析を行って、病原性を証明しその分子病態を明らかにすべく研究を継続している。
2: おおむね順調に進展している
目標を上回る症例数を集積して全エクソーム解析を行った。本疾患を引き起こす新規遺伝子の病原性を確定できる知見を得て論文投稿した。さらなる責任遺伝子の同定のための解析を継続中である。
データ解析を継続する。新規責任遺伝子の候補となる遺伝子を選定し機能解析によって確定させる。
全エクソーム解析に使用する次世代シーケンサー関連試薬の購入を予定より遅らせたため、次年度使用額が生じた。平成29年度に使用予定の分は平成30年度に使用する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
The Cerebellum
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1007/s12311-018-0941-6
Movement Disorders
巻: 33 ページ: 177~179
10.1002/mds.27219
Journal of Human Genetics
巻: 62 ページ: 741~746
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