研究課題
本研究は、責任遺伝子が同定されていない先天性副腎低形成症/ACTH不応症の家系を対象として、これまでの原因遺伝子から推測される候補遺伝子、およびNNT異常患者のセルラインを用いた解析から推測される候補遺伝子の解析を行うことにより、先天性副腎低形成症および先天性ACTH不応症の新規原因遺伝子を解明することを目的とする。近年、先天性副腎低形成症/ACTH不応症の原因として、ミトコンドリア電子伝達系の蛋白をコードするNNT遺伝子およびTXNRD2遺伝子が同定された。そこで、もう一つのミトコンドリア電子伝達系であるグルタチオン系の異常も、先天性副腎低形成症/ACTH不応症の原因となり得ると考え、ミトコンドリアのグルタチオン還元酵素をコードするGSR遺伝子、グルタチオンペルオキシダーゼをコードするGPX4遺伝子に注目した。昨年度までに、責任遺伝子が同定されていない先天性副腎低形成症/ACTH不応症の23家系およびその疑いの4家系で、GPX4遺伝子およびGSR遺伝子を候補遺伝子と考え、その解析を完了したが、既報のSNP以外の塩基置換は、蛋白コード領域およびエクソン-イントロン境界領域に認められなかった。今年度は、NTT蛋白機能を欠損しているNNT異常患者およびその欠損がない母親のリンパ芽球セルラインからRNAを抽出して、RNA-Seqによる発現遺伝子の解析を行った。得られた発現遺伝子のデータおよび、パスウェイ解析ソフトIPAを用いて、パスウェイ解析を行った。その結果、NNTの上流に位置する遺伝子として、CLPP遺伝子を同定することができた。CLPP遺伝子は、先天性副腎低形成症/ACTH不応症の新規原因遺伝子の候補と考えられる。
3: やや遅れている
解析対象数の増加、およびABI PRISM 310 Genetic Analyzerの故障のために、遺伝子解析に遅れを生じた。また、NNT異常患者のリンパ芽球セルラインから抽出したRNAを解析する方法を、研究申請時に予定していたdifferential display法からRNA-Seq法に変更したため、データの取得および解析に遅れを生じた。
RNA-Seq解析とパスウェイ解析ソフトで、NNTの上流に位置する遺伝子として同定したCLPP遺伝子を、先天性副腎低形成症/ACTH不応症の新規候補遺伝子と考えて、変異が同定されていない先天性副腎低形成症/ACTH不応症の患者で遺伝子解析を行う。
研究の遂行に遅れが生じたため、本研究の補助期間の延長を申請し、延長が承認された。次年度には、本年度に見いだした先天性副腎低形成症/ACTH不応症の新規候補遺伝子CLPPを責任遺伝子が同定されていない患者で解析するために、次年度使用額を使用する予定である。
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