研究課題
本研究は、責任遺伝子が同定されていない先天性副腎低形成症/ACTH不応症の家系を対象として、これまでの原因遺伝子から推測される候補遺伝子、およびNNT異常症患者の細胞株を用いた解析から推測される候補遺伝子の解析を行うことにより、先天性副腎低形成症/ACTH不応症の新規原因遺伝子を解明することを目的とする。近年、先天性副腎低形成症/ACTH不応症の原因として、ミトコンドリア電子伝達系の蛋白をコードするNNT遺伝子およびTXNRD2遺伝子が同定された。そこで、もう一つのミトコンドリア電子伝達系であるグルタチオン系の異常も、先天性副腎低形成症/ACTH不応症の原因となり得ると考え、ミトコンドリアのグルタチオン還元酵素をコードするGSR遺伝子、グルタチオンペルオキシダーゼをコードするGPX4遺伝子に注目し、その遺伝子解析を行ったが、既報のSNP以外の塩基置換は、蛋白コード領域およびエクソン-イントロン境界領域に認められなかった。そこで、NTT蛋白を欠損しているNNT異常症患者およびその欠損がない母親のリンパ芽球様細胞株のRNA-Seqを行い、得られたデータを用いてパスウェイ解析を行った。その結果、NNT遺伝子の上流に位置する遺伝子として、CLPP遺伝子を同定した。CLPP遺伝子は、先天性副腎低形成症/ACTH不応症の新規原因遺伝子の候補と考えられた。本年度は、昨年度に開始した新規候補遺伝子CLPPの解析を、責任遺伝子が同定されていない先天性副腎低形成症/ACTH不応症の22家系およびその疑いのある4家系で完了したが、蛋白コード領域およびエクソン-イントロン境界領域に塩基置換は認められなかった。以上の結果から、先天性副腎低形成症/ACTH不応症には、依然として未知の責任遺伝子が存在し、今後更なる検索が必要であると考えられる。
すべて 2021
すべて 学会発表 (4件)