研究課題
本疾患は自然免疫の異常によって引き起こされ、獲得免疫には異常はないとされてきていた。しかし近年の研究からB細胞やT細胞など獲得免疫の異常が報告されるようになっている。CGDで多くみられる炎症性腸炎や肉芽腫も自然免疫異常によるものと考えられてきたが、その本質はまだわかってない。病態としては自己抗体が検出されず、病変部に肉芽腫を形成するクローン病に類似する。T, NK細胞が欠損する重症複合免疫不全症(SCID)乳児例で炎症性腸炎を合併した症例を経験した。病変部の生検では肉芽腫が散見され、CGD症例ではないがT細胞、NK細胞が欠損する特殊な病態であり、腸炎のメカニズムとして重要と考え、解析を行った。この乳児例は疾患の特性上細胞性免疫不全、液性免疫不全症であり、また自己抗体産生もないことを確認した。遺伝子解析からIL2RGに変異を認めた。SCIDでは感染症によって症状を誘発することがあるが、腸炎を引き起こす病原微生物は検出されなかった。末梢血のCD8+T 細胞 CD56+ NK細胞は検出されなかったが、CD4+ T 細胞は81/μLとわずかに検出された。また腸管組織の免疫染色を施行したところ、CD3+T細胞が肉芽腫を伴う病変部に著明に浸潤し病態に強く関与していることが考えられた。末梢血のCD3+細胞をマグネットビーズにて濃縮し、その細胞の由来を個人識別で確認したところ、母親由来であることが判明した。腸管組織のCD3+T細胞も同様に解析し母親由来であることを確認した。また末梢血、腸管組織中ともにT細胞のモノクローナルな増殖を示唆するT細胞γ受容体のクロナリティーが陽性であった。以上から患者に混入した母親由来のT細胞がクローナルに増殖し肉芽腫を伴う腸炎に強く関与したことが推察された。CGDでも食細胞のみでなく、獲得免疫に異常が肉芽腫や腸炎に関与する可能性があり、重要な知見が得られた。
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Journal of Investigational Allergology and Clinical Immunology
巻: 31 ページ: 印刷中
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