研究課題/領域番号 |
17K10105
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
坂下 一夫 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (10345746)
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研究分担者 |
中沢 洋三 信州大学, 医学部, 教授 (60397312)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 白血病幹細胞 / 接着分子 |
研究実績の概要 |
若年性骨髄単球性白血病(JMML)の発症関連遺伝子は約90%の症例で同定されるようになった。こうした遺伝子解析によりJMMLは均一な疾患ではなく、治療抵抗性の症例から経過観察のみで血液学的に軽快する症例など様々な臨床経過を示すことが明らかとなっている。最近、我々はJMMLの白血病性幹細胞を末梢血から大量に増殖させる培養法を確立し、未熟な造血環境がJMMLの発症に密接に関連している事を報告した。本研究ではJMMLの発症あるいは進展に関わる造血微小環境分子(サイトカイン、接着分子、細胞外マトリックス)を明らかにし、多彩な臨床像との関連およびそれを標的とした新規分子標的治療薬の開発を試みることを目標としている。 これまでに接着分子であるプロトカドヘリン(PCDH)17遺伝子が白血病の進展に関わっていることを見いだし、その一部を報告した(Uyen TN, Sakashita K, et al. Pediatr Blood Cancer. 2016)。PCDH17遺伝子の働きについて白血病細胞株を用い、shRNAで遺伝子をノックダウン、あるいは遺伝子導入して解析したところ細胞増殖を抑制するする働きを持っていることを明らかにし、現在投稿中である。 また、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるpanobinostadをJMML幹細胞を増殖させる系を使用して解析したところ、薬剤はCD34+CD38-細胞の増幅能を抑制する働きがあることが明らかとなった。さらにJMMLで使用されるAzacitidineについてはD34+CD38-細胞の増幅能に影響を与えていないことを明らかにし、現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画ではマウスストローマ細胞であるAGM(AGM領域を胎生10.5日のマウス胚から採取し樹立したストローマ細胞株), OP9(新生児マウス骨髄由来ストローマ細胞株), MS5(成人マウス骨髄由来ストローマ細胞株)について次世代シークエンサーを用い、網羅的遺伝子解析を行い、特に細胞間接着分子、分泌分子などの細胞間シグナル伝達に関係する分子群、転写因子などの運命決定に関係する分子群に特に注目し、比較検討を行う予定であったが、細胞間接着分子、細胞間シグナル伝達に係る遺伝子の同定に至っていない。現在同定に向けて解析中である。平成30年度中には同定予定である。 またこれまでの解析から接着分子のPCDH17の白血病細胞に与える影響については順調に解析が進行しており、次の段階としてJMML幹細胞における役割について引き続き解析を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
マウスストローマ細胞のAGM, OP9, MS5の網羅的遺伝子解析を行い、JMML幹細胞の増幅に係る細胞間接着分子、分泌分子などの細胞間シグナル伝達に関係する分子群、転写因子などの運命決定に関係する分子群の同定を試みる予定であったが、AGMを脱メチル化酵素であるアザシチジンや、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンAを使用し、AGMの遺伝子発現を変化させることによりJMML幹細胞の増殖能を検討し、どの分子が増殖能に影響を与えているか次世代シークエンスを使用して解析を行う。同定できた場合にはAGM細胞やMS5細胞などに遺伝子導入あるいは、ノックダウンを行い解析を進める。 接着分子のPCDH17の白血病細胞に与える影響については順調に解析が進行しており、次の段階としてJMML幹細胞における役割について引き続き解析を行っていく。具体的にはJMML細胞における発現量を解析する。さらにJMML幹細胞でのPCDH17遺伝子をshRNAでノックダウンさせ、JMML白血病性幹細胞の増殖抑制について検討する。 さらに最近接着分子のインテグリンが造血幹細胞の維持に重要な働きをしている報告があり、特にインテグリンαvβ3が重要であることが示された。JMML白血病幹細胞において解析を行い、役割について検討を行う。具体的にJMML幹細胞における発現解析と阻害剤が存在しているので、JMML幹細胞増殖培養系に阻害剤を添加し、その作用の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シークエンスによるマウスストローマ細胞の遺伝子発現解析が予定よりも遅れ、今年度に実施できなかったため次年度への繰り越しとなった。本年度は研究計画に基づき実施予定である。
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