研究課題
再発・治療不応性T細胞性急性リンパ性白血病(ALL)の生命予後はきわめて不良である。再発・治療不応性B細胞性ALLに対しては、CD19抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子改変T細胞療法がきわめて有効で、2019年にCD19 CAR-T細胞が日本で薬事承認された。T-ALLを対象とするCAR-T細胞の開発も待望されているが、その開発は困難をきわめているのが現状である。その理由として、T-ALL細胞を治療対象とする場合、(1)標的とする抗原が正常T細胞と共通であるためCAR-T細胞の製造過程でCAR-T細胞同士の殺し合いが生じること、(2)患者体内で末梢血中の大量の正常T細胞を殺傷し早期にCAR-T細胞の免疫疲弊が起こりうること、(3)患者体内で末梢血中の大量の正常T細胞を殺傷する際にサイトカイン放出症候群を発症するリスクが高いことなどが挙げられる。本研究の目的は、T-ALL細胞上に発現するT細胞抗原を標的としながらも、付加的な遺伝子改変を組み入れることによってCAR-T細胞同士の殺し合いが起きなくなる、もしくはCAR-T細胞の投与方法を工夫することによって正常T細胞への反応が最小限になるようなCAR-T細胞療法を開発することである。研究代表者がこれまで開発してきた非ウイルス遺伝子改変CAR-T細胞の作製技術を用いて、2019年度にはCD7を標的とする新規CAR-T細胞の樹立し、in vitro実験においてCD7 CAR-T細胞のT細胞性白血病に対する抗腫瘍効果を確認した。また、CAR-T細胞の投与方法として、髄腔内に投与したCAR-T細胞が全身投与したCAR-T細胞よりも効果的に中枢神経白血病を制御できることを明らかにした。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Mol Ther Oncolytics
巻: X ページ: X
臨床血液
巻: 60 ページ: 1351-1357