研究課題/領域番号 |
17K10109
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋井 佳子 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (60343258)
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研究分担者 |
白川 利朗 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (70335446)
片山 高嶺 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (70346104)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腸管免疫 / がんワクチン / ビフィズス菌 |
研究実績の概要 |
E.coli-B.longum shuttle vector を用いてGNB/LNB トランスポーターの基質結合タンパク質のC 末端側にWT1 遺伝子の一部(ほぼ全域)を融合させる。ビフィズス菌に導入しWT1蛋白の一部を B. longum 表層に発現させた組み換えビフィズス菌を作製する。白血病細胞株を移植したマウスに内服投与した。この結果有意な腫瘍縮小効果が得られ、かつ脾細胞においてWT1特異的キラーT細胞を検出した。すなわちWT1蛋白を発現したビフィズス菌が腸間膜から取り込まれ、末梢へ循環し、抗腫瘍効果を発現したと考えられる。本研究の目的は腸管に焦点を当てて腸管免疫からみた本抗腫瘍効果の機序を解明することである。 ①マウスにB.Longum+WT1を内服させ、腸間膜リンパ節、パイエル板、脾臓のリンパ球を採取しその性質を検討し、B.Longum+WT1の腸管での振る舞いを明らかにする。また多くの腸内細菌は主にM細胞から取り込まれ粘膜下層へ侵入と考えられているが、B.Longum+WT1がどの細胞から取り込まれているかを検討し腸管粘膜から粘膜下層を通り抗腫瘍効果をおこすリンパ球の動態を明らかにする。 ②B.Longum+WT1を内服させたマウスの腸間膜リンパ節、パイエル板、脾臓の各組織から単核球を分離し、含まれる樹状細胞をフローサイトメトリーで染色する。活性化している樹状細胞集団を特定し、腸間膜下におけるB.Longum+WT1が刺激する樹状細胞の局在性、刺激の状態を明らかにする。 ③本剤はB. longum 表層にWT1蛋白、GLBPが発現した構造である。B.Longum+WT1の各部分の免疫学的役割について検討し、アジュバント効果、抗腫瘍効果をきたす部位の検討をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスB.Longum+WT1を内服させ、20日後に腸間膜リンパ節、パイエル板、脾臓のリンパ球を採取し各部位におけるWT1特異的キラーT細胞をWT1tetramerアッセイにより検出した。 この結果、腸間膜リンパ節、脾臓においてのみをWT1tetramer+CD8+細胞を検出した。パイエル板のリンパ球には認められなかった。また脾臓、腸間膜リンパ節のリンパ球を検討したところ、CD8陽性細胞において細胞内IFN-γ産生が認められた。このことから腸間から吸収されたB.Longum+WT1はパイエル板ではなく腸間膜リンパ節で活性化し、全身へ循環することで抗腫瘍効果を発現していると考えられた。この効果におけるB.longum+WT1の各部分の役割を明らかにするためにマウスにWT1蛋白を強発現させた白血病株であるC1498を接種し、PBS, B.longum+GLBP, B.longum、B.longum+WT1を内服させた。この結果、PBSと比べてB.longum+GLBP、 B.longum+WT1内服マウスにおいて有意に腫瘍縮小効果が認められた。このことはGLBP自体がアジュバント効果のような抗腫瘍免疫を持つと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
Evoglowは嫌気状態で使用可能な蛍光タンパク質である。EvoglowをB.longum+WT1に導入し、腸管壁からの吸収、接着細胞の同定を試みた。しかしながらEvoglowの発現が低く、導入効率が悪いためB.longum+WT1の腸管粘膜下への侵入を観察することができなかった。現在、B.longum+WT1を蛍光色素CFSEで染色し内服させたマウスにおいて組織学的に視覚化することを試みている。 B.longum+WT1の構造におけるGLBPの役割についてB.longum+GLBPを投与したマウスの腸間膜リンパ節の樹状細胞の活性化をPBS群と比較することを計画している。また平成29年度は樹状細胞の検討が十分ではなかったことから平成30年度は腸管免疫における樹状細胞に着目して行いたいと考えている。またWT1特異的キラーT細胞を検出することができたがCD4,NK細胞への影響についても検討が必要であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
Evoglowを用いた遺伝子編集ができなかったため局在性の解析が遅れている。適切な蛍光色素の検討をおこなったため研究が遅れている。現在CFSEによる染色をおこなうことを計画している。一方、腸管免疫の解析においてリンパ球系の解析は進んでいるが樹状細胞の分離、機能解析の計画ができておらず、遅延しているため。
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