研究課題
現在、FLT3/ITD陽性白血病細胞がFLT3/ITD抑制剤に対する耐性を生ずる分子機構を解析している。FLT3/ITD抑制剤QuizartinibはFLT3/ITD陽性白血病細胞をアポトーシスに導いたが、骨髄微小環境に存在するケモカインCXCL12を添加するとQuizartinib単独時に比べて細胞のアポトーシスは更に増加した。一方、CXCL12に対する受容体CXCR4に対する拮抗薬AMD3100はCXCL12によるアポトーシス誘導効果を部分的に解除し、Quizartinibによるアポトーシスは結果として減少した。これらは、CXCL12によって生ずるシグナルが、FLT3/ITD機能を抑制的に制御する可能性を示唆する。そこで、FLT3/ITD陽性細胞をCXCL12で刺激し、遺伝子発現を網羅的に解析した。全mRNAの内、約13%が FLT3/ITDによって増加または減少したが、この内約4%が更に増強または減少したのに対して、約18%がFLT3/ITDによって変動する変化と拮抗して変化した。即ち、FLT3/ITDによって生ずる遺伝子発現変化は、CXCL12によって一部はその効果が増強される一方、その他は拮抗されることが明らかとなった。したがって、微小環境内に存在するCXCL12はFLT3/ITD細胞に対して促進的機能を持つ一方で、抑制的な機能も併せ持つ。米国の臨床治験では、CXCR4拮抗薬を用いたFLT3/ITD陽性白血病の治験が行われ、部分的に有効ではあったが、不完全であった。今回のデータはCXCR4拮抗薬が、CXCL12によって生ずるFLT3/ITD機能を拮抗するシグナルを抑制することを示唆し、FLT3/ITD抑制剤に対する抵抗を助長する可能性を示す。今年度は、遺伝子発現スクリーニングを用いて解析を行ったが、次年度はゲノム編集技術を用いてFLT3/ITD抑制剤に対する抵抗性の分子機構を解析する予定である。
3: やや遅れている
薬剤抵抗性に関する分子機構の解析は進んでいるが、当初提案したゲノム編集技術を用いた解析には至っていない。薬剤抵抗性分子を同定する為のguide RNAライブラリー導入の為の予備実験に時間を要している。効率の良い導入が行えないとスクリーニングできないので、効率よい導入を行う為の実験条件の検討も行っている。
今年度は、遺伝子発現スクリーニングを用いて解析を行ったが、次年度はゲノム編集技術を用いてFLT3/ITD抑制剤に対する抵抗性の分子機構を解析する予定である。guide RNAライブラリーの導入の条件が整えば、ライブラリーを薬剤抵抗性細胞に導入し、その中で薬剤抵抗にかかわる新しい分子を同定する予定である。
予定した購入物品を購入できなかった為(ゲノム編集用のguide RNAライブラリー)
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Cell
巻: 172 ページ: 191-204
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Stem Cells
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http://ped-shimane-u.jp/study/hematological_malignancy