研究課題/領域番号 |
17K10115
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
江口 峰斉 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (50420782)
|
研究分担者 |
石井 榮一 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (20176126)
江口 真理子 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (40420781)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 前白血病幹細胞 / 白血病幹細胞 / MLL融合遺伝子 / TEL融合遺伝子 |
研究実績の概要 |
MLL-AF4およびTEL-AML1融合遺伝子を発現するマウスES細胞を作製し、造血幹細胞より未分化な細胞におけるこれらの融合遺伝子の影響を検討するとともに、前白血病幹細胞から白血病幹細胞形成のモデルとして、白血病幹細胞への進展に必要な因子の同定を試みた。まずMLL-AF4およびTEL-AML1を発現するマウスES細胞由来の造血前駆細胞を免疫不全マウスに移植した場合、マウスは比較的長期の観察期間の後に腫瘍を発生する。このことからMLL-AF4およびTEL-AML1を導入することにより形成されるのは前白血病幹細胞であり、これらの融合遺伝子のみでは白血病幹細胞の形成には不十分であると考えられた。白血病幹細胞の形成には何らかの付加異常が加わる必要があると考えられた。 白血病幹細胞への進展に必要な付加異常を導入するために、これらの融合遺伝子を有するマウスES細胞由来の造血前駆細胞にインサートを持たないMSCVレトロウイルスベクターを導入し、ランダムな挿入変異を導入した。挿入変異を生じたMLL-AF4ないしはTEL-AML1陽性マウスES細胞由来の造血前駆細胞はレトロウイルス未導入の細胞と比較して移植後早期に免疫不全マウスに腫瘍を発生させることが示された。レトロウイルス挿入変異の影響を調べるため、各腫瘍細胞からDNAを抽出し、inverse PCR法によりレトロウイルスの挿入部位を同定した。サザンブロッティング法によるレトロウイルスの挿入部位の解析では造血前駆細胞はオリゴクローナルに増殖して腫瘍化しており、腫瘍化に際してクローンの選択が行われていることが示された。レトロウイルス挿入による影響はMLL-AF4では近傍の遺伝子の発現上昇が認められ、またTEL-AML1では逆に遺伝子内への挿入により遺伝子発現の低下が認められた。現在個々の遺伝子について腫瘍化における意義づけを検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
免疫不全マウスへの移植により得られた腫瘍の解析に予定以上に時間を要したため。
|
今後の研究の推進方策 |
マウスES細胞由来の未分化造血細胞への挿入変異により同定した遺伝子発現に影響を受けた遺伝子について、その腫瘍化における役割を解明するとともに、これらの分子に対する阻害剤のスクリーニングを行い、白血病細胞の生着・発症が抑制されるかどうかをマウス移植モデルで検討する。 またTEL-AML1およびMLL-AF4融合遺伝子を発現するマウスES細胞から得られた未分化造血細胞を用いて免疫不全マウスへの移植モデルにおいて、前白血病幹細胞のマウス体内での存在様式とその維持機構についてモデルマウスを用いて詳細に検討する。具体的にはこれらの融合遺伝子を発現するマウスES細胞を未分化な造血幹細胞であるTie2陽性細胞や、未分化Bリンパ球前駆細胞であるB220陽性細胞へ分化させ、免疫不全マウスへ移植する。この移植マウスの骨髄や肝臓等の組織におけるTEL-AML1やMLL-AF4陽性細胞の生着の有無と局在、表面マーカー、遺伝子発現などを詳細に解析し、細胞生存・維持に働く遺伝子・シグナル経路を明らかにする。 さらに白血病症例の保存検体を用いた免疫不全マウスへの移植モデルにおいて、患者白血病を再現するとともに、少数の遺伝子変異のみを有する前白血病幹細胞の生着・分離を試みる。分離された前白血病幹細胞の遺伝子異常・遺伝子発現を発現アレイなどで検討し、前白血病幹細胞に特徴的な遺伝子発現の解明を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:ある程度の免疫不全マウス購入費を他の学内資金で振り分けることができたため、最終的に研究費に次年度使用額が生じた。
使用計画:今年度も当初の研究計画通り、マウスES細胞や免疫不全マウスへの移植実験を継続する予定である。。
|