研究課題/領域番号 |
17K10118
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
西 順一郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (40295241)
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研究分担者 |
藺牟田 直子 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (00643470)
大岡 唯祐 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (50363594)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大腸菌 / 腸管凝集性大腸菌 / 基質拡張型βラクタマーゼ |
研究実績の概要 |
小児の腸管に棲息する大腸菌における病原・薬剤耐性遺伝子の水平伝播の実態を明らかにすることを目的として、鹿児島県の小児下痢症患児から分離された大腸菌8,729株を対象に、基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)CTX-M遺伝子と下痢原性大腸菌の病原遺伝子の分布をPCRで検討した。 平成30年度は、2011年から2016年に分離されたAggR陽性の腸管凝集性大腸菌(Enteroaggregative Escherichia coli, EAEC)70株の遺伝的多様性を調べ、2010年以前と比較した。O血清型は、OUT 23株(32.9%)、O111 14株(20%) O126 12株(17%)、O127 5株(7.1%)、2010年以前に多くみられた尿路病原性大腸菌とのハイブリッド株であるO25は2株(2.9%)のみだった。線毛遺伝子AAFは、O111がAAF3/5、O126がAAF2を保有しており、バイオフィルム形成能の強い株もみられた。CTX-M遺伝子保有株の頻度は12.9%(9/70)であり、O111で43%(6/14)と高く、O127 20%(1/5)、O126は0%だった。CTX-Mタイプは、CTX-M-14 が78%(7/9)を占めた。以上から、ハイブリッド株O25は消失し、代わりに本来のEAEC O111が新たにCTX-M遺伝子を獲得したことがわかった。また新たにCTX-M陽性のEAEC O127の出現がみられた。 さらに、鹿児島大学病院に入院中の小児患者から菌種の異なるカルバペネマーゼIMP-1産生の腸内細菌科4株(Enterobacter hormaechei, E. cloacae, Klebsiella oxytoca, E. coli)が経時的に検出され、すべての菌株がIncLプラスミドを共通して保有しており、同一患者の腸管内で同一の薬剤耐性プラスミドが菌種を超えて伝播していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2001~2016年の小児腸管由来大腸菌において、ESBL(CTX-M)遺伝子や下痢原性大腸菌の病原遺伝子の水平伝播が活発に起こっていること、ならびにEAECの遺伝的多様性が経時的に変化していることを示すことができ。本課題の主題である病原遺伝子と薬剤耐性遺伝子の水平伝播の実態の一部を解明できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2017年から2018年の下痢症患児の便由来大腸菌を対象に、ESBL遺伝子、下痢原性大腸菌の病原遺伝子およびK1莢膜遺伝子の分布状況を継続して調査する。さらにわが国で薬剤耐性(AMR)対策として抗菌薬適正使用が進む中、EAECをはじめとする病原性大腸菌の薬剤耐性化やビルレンスがどのように変化していくかを監視する。
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次年度使用額が生じた理由 |
IMP-1産生株のゲノム解析をする予定であったが、プラスミドレプリコンタイプの実施が海外試薬購入に時間がかかったため、年度内に実施できなかった。繰り越し費用と次年度予算を合わせて次年度に実施する予定である。
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