研究課題
小児の腸管に棲息する大腸菌における病原・薬剤耐性遺伝子の水平伝播の実態を明らかにすることを目的に、鹿児島県の小児下痢症患児から分離された大腸菌株を対象に、基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)CTX-M遺伝子と病原遺伝子の分布をPCRで検討した。令和元年度は、2018年に収集した大腸菌309株を対象とし、CTX-M、CMY-2(AmpC CIT群)、IMP-1遺伝子、下痢原性大腸菌(DEC)の病原遺伝子および髄膜炎関連K1莢膜遺伝子(neuC)をPCRで検出した。CTX-M遺伝子は10.7%(33/309)、CMY-2遺伝子は1.0%(3/309)にみられ、両遺伝子陽性の株が1株みられた。CTX-M遺伝子陽性株33株のうち、EAECの転写因子aggRを1株(1.0%)、neuCを4株(12%)が保有していた。以上の結果から、小児腸管由来大腸菌におけるCTX-M遺伝子陽性株の頻度は、依然として高い状況が続いていることが明らかになった。また、これらCTX-M遺伝子陽性大腸菌の一部は、DECや髄膜炎関連の病原遺伝子を保有しており、病原性の高い薬剤耐性菌の出現が懸念された。さらに、鹿児島大学病院の小児患者から検出されたカルバペネマーゼIMP-1産生の腸内細菌科細菌(Enterobacter cloacae complex, Klebsiella oxytoca, 大腸菌)のゲノム解析を実施した結果、こられが共通に保有するIncLタイププラスミド上に、IMP-1がコードされていることがわかった。またこのプラスミドの塩基配列は、2013年に福岡市で検出されたIMP-1産生腸内細菌科細菌のIncL/Mプラスミドと一部のギャップ領域を除き100%一致し、九州地方で同一のIMP-1遺伝子保有プラスミドが伝播している可能性が示唆された。
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