研究実績の概要 |
まず、基礎実験としてインフルエンザウイルス感染実験で汎用されているMDCK細胞を用い、H1亜型インフルエンザウイルスの野生株(以下WT)とオセルタミビルとペラミビルに感受性が低下したH275Y変異株(以下H275Y変異株)を感染させ、段階希釈した各NA阻害薬(NAI)(オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル)とプロテアーゼ阻害薬(PI)とともに72時間培養し、各薬剤単独およびPIとNAIとの併用効果について、リアルタイムPCR法にて培養上清中のウイルス量を定量し、コントロールに比較してウイルス産生量を半減できる薬剤濃度(EC50)を検討した。 1.WTに対するオセルタミビル、ザナミビルおよびペラミビルのEC50は、それぞれ、46.0 nM、49.6 nMおよび5.5 nM、PIであるCamostat Mesilate(以下CM)とNafamostat Mesilate(以下NM)のEC50はそれぞれ4.3 μMと0.9 μMであった。 2.H275Y変異株に対するオセルタミビル、ザナミビルおよびペラミビルのEC50は、それぞれ、> 10,000 nM、81.4 nMおよび2,940 nM、CM とNMのEC50はそれぞれ3.8 μMと1.4 μMであった。 3.WTとH275Y変異株について、各NAIと各PIを併用したところ高い相乗効果を認めた。特に、ヒトにおいて静注製剤であるペラミビルとNMとの併用で最も高い相乗効果が認められた。なお、各NAIと各PIについて、それぞれ最高濃度を10,000 nMと1,000 μMで細胞毒性を評価したが、細胞毒性は認められなかった。 以上の結果から、H275Y変異株に対してペラミビルとプロテアーゼ阻害薬を併用することで、細胞毒性を示すことなく臨床的な有効性が期待できると予想される。
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