研究課題/領域番号 |
17K10120
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
細矢 光亮 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (80192318)
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研究分担者 |
川崎 幸彦 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (00305369)
橋本 浩一 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (50322342)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 急性脳症 / 血液脳関門 / 血管内皮障害 / タイトジャンクション / サイトカイン / ウイルス / 血管透過性 / 血管内皮電気抵抗 |
研究実績の概要 |
ウイルス関連急性脳症(VAE)の病態は、高サイトカイン血症により血液脳関門(BBB)が障害される非炎症性の脳浮腫である。今回、我々は脳血管内皮細胞と周皮細胞の3次元的共培養によるin vitro BBB モデルにてin vitro VAEモデルを作成し、炎症性サイトカインTNF-αによる脳血管内皮細胞障害の動的変化を以下の方法で評価した。①ヒト脳血管内皮細胞と周皮細胞をトランスウェル膜の上部と下部にそれぞれ培養し、cellZscopeを用いてTERを経時的に測定した。TERがプラトーになったことを確認後、段階希釈したTNF-αを添加してin vitro VAEモデルを作成し、TERを継続して測定した。②同様のトランスウェルシステムを用いて分子量の異なるフルオレセインナトリウム(分子量376 Da)またはFITC標識デキストラン(分子量3-5 kDa、70 kDa、250 kDa)を添加し物質の細胞透過を蛍光マイクロプレートリーダーにより評価した。③TNF-α添加後の血管透過性変化に伴うclaudin-5とZO-1の局在変化を蛍光免疫染色により、またclaudin-5の蛋白発現変化をウェスタンブロット法によって観察した。結果は以下の通りであった。①TER値は、TNF-α添加後に減少し、最小値に達した後、徐々に回復したが、回復までの時間は、TNF-α濃度に依存した。②溶質透過試験では、TNF-α添加後にすべての分子量の物質の透過性が亢進したが、その程度は分子量とTNF-α濃度に依存し、経時的に回復の傾向を認めた。③claudin-5の局在は、TNF-α添加後に変化し、TNF-α濃度依存的に回復した。一方、ZO-1の局在には変化がみられなかった。claudin-5の発現は、TNF-α添加24時間後にTNF-α濃度依存的に減少した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度、ヒト脳血管内皮細胞不死化細胞株(HCMEC/D3)を用いて検討したが安定した系の確立は困難であったので、本年度は脳血管内皮細胞と周皮細胞を用いた血液脳関門モデルを用い、TNF-αを添加することによりin vitroのVAEモデルを検討し確立した。当初の計画は、安定的なVAEを用いて、各種薬剤のin vitro VAEモデルに対する影響を評価する予定であったが、系の確立に時間を要したため、薬剤調整等の準備段階でとどまり、計画より遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
我々が作製したin vitro VAEモデルは、VAEの病態解明だけではなく、血管透過性に焦点をあてた特異的治療法開発に有用であると考える。今後は、この評価系を用いて、各種薬剤のin vitro VAEモデルに対する影響を評価する予定である。薬剤として、急性脳症のリスク要因である解熱剤(ジクロフェナク、メフェナム酸)、アポトーシスを抑制するシクロスポリン、ステロイド剤などの免疫抑制剤、抗サイトカイン抗体、タイト結合の形成を促進させ血管透過性を改善させうる薬剤(cAMP、エストロゲン)などを用いて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に従い、消耗品を購入したが、少額の残金が発生した。次年度も研究計画に従い研究を実施する。
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