研究課題/領域番号 |
17K10127
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
松本 智子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80642678)
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研究分担者 |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50326328)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 後天性凝固異常症 / 凝固機能評価 |
研究実績の概要 |
後天性凝固異常症は、突然発症する特定の凝固因子あるいはリン脂質に対する抑制物質による重篤な出血あるいは血栓をきたす疾患である。後天性血友病A(AHA)、抗リン脂質抗体症候群またはループスアンチコアグラント(LA)陽性群の各種疾患において、①抑制メカニズムの解明②汎用性の高い診断方法の確立③AHAにおける治療への応用ついて検討する。①についてはLA陽性群あるいは抗リン脂質抗体症候群において抗凝固作用をもつ活性化プロテインC(APC)に対して抵抗性を有するもAHAではAPC抵抗性は示さない。血栓症を示す抗リン脂質抗体症候群(APS)と重篤な出血症状を示すAHAの汎用性の高い鑑別方法としてAPTTに基づく凝固波形解析(CWA)のパラメータでAPSが有意に高値を示した。これらの抑制メカニズムの差異によってAPTT凝固時間のみでは共に延長し鑑別が困難であるが凝固波形解析は鑑別に有用であることを示唆した。(Matsumoto T; IJH 2017)。②の診断方法の確立について、APTT測定時にtPAを添加するとフィブリン形成過程およびその後のフィブリン溶解反応過程をリアルタイムに観察でき、凝固線溶能を同時に評価できる方法を開発した。特に、一旦凝固完了後に線溶が開始する時間が正常血漿では約100秒だが、先天性血友病Aでは60秒と短縮しフィブリン塊の脆弱性を認め、学会発表を実施した。さらに後天性凝固異常症の解析を実施したい。③のAHAにおける治療への応用の検討はできていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、APTT延長を認める後天性凝固異常症の凝固波形解析(CWA)を使用した鑑別について論文が掲載された。また、第VIII因子の極微量まで感知できる高感度のCWAについても論文が掲載された。②の診断方法の確立について、APTT測定時にtPAを添加するとフィブリン形成過程およびその後のフィブリン溶解反応過程をリアルタイムに観察でき、凝固線溶能を同時に評価できる方法について学会報告済みで目標は達成され、現在論文を作成中である。LA陽性群および抗リン脂質抗体症候群について現在検討中である。③AHAにおける治療応用についてはまだ検討できていない。さらにこれらの病態把握や止血効果を確認するための凝固機能および凝固線溶機能評価は重要だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
後天性凝固異常症の凝固機能および凝固線溶機能の抑制メカニズムの解析および新規評価方法の確立は実施するつもりである。 職場が変更になったが、奈良医大では博士研究員として研究が継続できる環境である。研究の進捗が進まない場合には研究分担者の野上恵嗣先生に相談し、研究を進めるように努力する。天理医療大学でも凝固機能および凝固線溶機能評価法についてまた後天性凝固異常症の解析などの検討ができる準備を進めているところである。
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