研究課題/領域番号 |
17K10128
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
荻原 建一 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50623500)
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研究分担者 |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50326328)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フォン・ウィルブランド因子 / 一塩基多型 / 第VIII因子 |
研究実績の概要 |
本研究ではフォン・ウィルブランド因子(VWF)が凝固第VIII因子(FVIII)と結合する上で重要なD'D3ドメインの機能増強を起こし得る遺伝子バリアントをin silico解析により探索し、機能増強型VWF遺伝子の存在を探る目的のもと、以下の4ステップの計画のうち、ステップ③に進んでいる。 ①HEK293T細胞を用いたヒトVWF蛋白の発現モデルの確立:ヒトVWFcDNAを挿入したプラスミドを作成し培養皿内でHEK293T細胞へのトランスフェクションを実施し、VWF蛋白を発現し、その機能(コラーゲン結合能、FVIII結合能)を確認した。 ②D'D3ドメインの多型/変異候補の探索と絞り込み:VWDデータベースおよびVWFバリアントデータベースから、VWFのD'D3領域(S764-P1247)のtype2N VWD変異とその周辺の一塩基多型を抽出し、これらの配列から予測される蛋白構造、RNA構造、スプライシング部位を各種in silico解析ツールを用いて探索し、機能増強可能性バリアント候補を絞り込んだ。 ③絞り込んだ候補多型/変異のVWF蛋白の発現と解析:バリアントのうち、複数のVWFバリアント蛋白の発現を実施し、そのVWF機能(コラーゲン結合能、FVIII結合能)を解析した。FVIII結合能増強バリアントは同定されておらず、ステップ②を再実施したうえで、機能解析を継続している。 ④VWFノックアウトマウスを用いたヒトVWFcDNAのin vivo発現実験:VWF発現量、FVIII結合能の変化量が多かった多型/変異を絞り込み、VWFノックアウトマウスへの遺伝子導入を予定している。 ステップ④に進むに至っておらず、研究期間を延長している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度にVWF蛋白発現工程の条件調整が必要であったため、①のステップに遅れが生じ、③のバリアント蛋白発現のステップに進むことができなかった。2020年度には、ベクターのHEK細胞への導入にpiggyBacトランスポゾンを用いることで、変異VWFの安定的発現に成功した。しかし、機能解析において機能増強を確認するに至っていなかった。そのため、②のステップを再度見直し、機能増強変異の候補を再検討し、候補変異を増やして発現VWFバリアントのFVIII結合能試験を繰り返している。野生株とType2N変異株(T789P)の結合能は想定どおりであるが、野生株を上回る結合能を示す変異株の同定に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
バリアント蛋白の発現種類を増やすだけでなく、純化精製過程の見直しも検討する。機能増強可能性のあるバリアントを同定し、最終ステップであるVWFノックアウトマウスを用いた実験につなげたい。
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