研究課題
本研究ではフォン・ウィルブランド因子(VWF)が凝固第VIII因子(FVIII)と結合する上で重要なD'D3ドメインの機能増強を起こし得る遺伝子バリアントをin silico解析により探索し、機能増強型VWF遺伝子の存在を探る目的のもと、4ステップの計画のもと、研究を実施した。①HEK293T細胞を用いたヒトVWF蛋白の発現モデルの確立:ヒトVWFcDNAを挿入したプラスミドを作成し培養皿内でHEK293T細胞へのトランスフェクションを実施し、VWF蛋白を発現し、その機能(コラーゲン結合能、FVIII結合能)を確認した。ベクターとして、pCI-neo-huVWF-ESNおよびpPG-CAG-huVWF-PGKpuroを試行し、後者ベクターによってVWF発現安定株を樹立することができた。②D'D3ドメインの多型/変異候補の探索と絞り込み:VWDデータベースおよびVWFバリアントデータベースから、VWFのD'D3領域(S764-P1247)のtype2N VWD変異とその周辺の一塩基多型を抽出し、これらの配列から予測される蛋白構造、RNA構造、スプライシング部位を各種in silico解析ツールを用いて探索し、機能増強可能性バリアント候補を絞り込んだ。③絞り込んだ候補多型/変異のVWF蛋白の発現と解析:VWFバリアント蛋白の発現を実施し、そのVWF機能(コラーゲン結合能、FVIII結合能)を解析した。既知のType2NバリアントであるT789Pバリアントと野生型VWFのFVIII結合能を指標とし、T789PバリアントのFVIII結合能低下を確認できたが、野生型VWFのFVIII結合能を上回るバリアントを同定するに至らなかった。したがって、④VWFノックアウトマウスを用いたヒトVWFcDNAのin vivo発現実験に進むことができなかった。
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