研究課題/領域番号 |
17K10133
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
白戸 憲也 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (40415477)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | RSウイルス / Ephrin-B2 / RARRES2 |
研究実績の概要 |
これまでの研究でEphrin-B2およびRARRES2がRSウイルス複製に関与している可能性が示唆されている(Virus Res. 2015. 210:213)。平成29年度は、まずこれらの遺伝子の役割を解明するために、CRISPRテクノロジーによるノックアウト細胞の作製から始める。 RSウイルス高感受性細胞であるHEp-2、上記遺伝子ピックアップに用いたHeLa、呼吸器上皮由来のA549細胞を用い、Ephrin-B2、RARRES2のシングルおよびダブルノックアウト細胞を作製を行った。CRIPRはオフターゲット効果を抑えるために、SigmaのPaired nickasesを用い、さらに1つのターゲットについて2種のプラスミドを用いた。ノックアウトは標的配列をプライマーとしたRT-PCRで確認する。標的配列がノックアウトされていればPCRで増幅産物は見られなくなり、選択が可能であると考えられた。まずはEphrin-B2のシングルノックアウト細胞を用い、先の報告で確立しているウイルス感染実験を行った。先の報告の通り、ノックアウト前と比べてウイルス複製の減少が確認できた。次いでレポーター遺伝子を発現するLong株を用いて、細胞侵入についての感染実験を行った。結果としておそらく細胞侵入に関連している可能性も示唆されたが、対照として置いていたVSVでも細胞侵入の減少がみられることが分かった。細胞侵入経路の違いによってEphrin-B2のノックアウトの影響が変化している可能性も考えられるため、エンドソーム経由と細胞表面の2つの細胞侵入経路を持つことが明らかになっているヒトコロナウイルスを用い、この影響を調べる必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ノックアウト細胞の作製が完了し、感染実験の実施が可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように、Ephrin-B2遺伝子機能の有無が細胞侵入に影響する可能性があるため、2つの細胞侵入経路を持つことが明らかになっているヒトコロナウイルスを用いて、侵入経路の違いによる影響の検討を行う。HeLa細胞と膜型セリンプロテアーゼTMPRSS2細胞を発現するHeLa/TMPRSS2細胞と用い、両者のEphrin-B2遺伝子をノックアウトしたものを用い、さらにESTやCamostat等のプロテアーゼインヒビターを用いることで検討が可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初作製予定のノックアウト細胞の作製がおおむね順調であったため、細胞の作製に関する費用があまりかからなかった。今年度は新たに細胞侵入経路の検討が必要となり、そのための費用として使用する予定である。
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