研究課題
小児肝移植後にEpstein-Barr Virus (EBV) に初感染する割合は約60%でEBVゲノム数の高値が持続することが多く,潜伏感染のため抗ウィルス薬の効果はなく致死率の高い移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)を発症する可能性がある.PD-1(programmed cell death-1)受容体は活性化 T 細胞の表面に発現し,リガンドである PD-L1は通常抗原提示細胞の表面上に発現する.PD-1,PD-L1は,T細胞応答を抑制もしくは停止させる共同抑制因子として働く免疫チェックポイント・タンパク質である.EBV感染細胞が表出するPD-L1の発現量を測定することによりPTLD発症のhigh risk群を同定できる可能性がある.重症複合型免疫不全症のスクリーニング検査にもちいられているTRECs(T-cell receptor excision circles)およびKRECs(kappa deleting recombination excision circles)を,それぞれTリンパ球およびBリンパ球の分化・増殖状態のbiomarkerとして用いる.そこで,PTLDを発症するEBV自体の腫瘍化の素因と宿主であるレシピエント側の免疫能の素因として以下の因子を解析しEBVゲノム数高値の原因の解明,PTLD発症high risk群を特定する治療アルゴリズムを構築することを目的として本年度は以下の点について検討を行った.1)PD-1及びPDL-1に関する検討:PTLD発症例も含め現在外来follow up中の患児84例に関して407検体においてCD4およびCD8陽性Tリンパ球における,PD-L1の発現の有無に関して検討した.2)TRECs/KRECsの発現レベルを検討した.TRECsの厳密な検討は1-2日用するため,簡便で迅速な診断とは言えない.そこでFCM法を利用してTRECsの結果と相関し,かつ簡便で迅速に解析できるマーカーとしてCD3+ / CD4+ / CD31+ / CD45RA+の細胞を検討した.3) PTLを発症した患児のBARTsに関してはCOVID19対応のため,測定施設のsequenceが停止しているため,再開を待っている状況である.
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