研究課題
左室心筋緻密化障害は心筋細胞の発生段階における分化・成熟過程の障害が原因と考えられており、本疾患においてはNOTCH signaling pathwayが主要な役割を果たしているが、分子生物学的な病態に関しては依然不明な点が多い。本研究の目的は、同pathwayの鍵となる、新たに発見された変異BMP10タンパクが分子細胞生物学的にどのように本疾患をもたらすのか、iPS細胞から分化誘導した疾患特異的心筋モデルを用いて解明することである。心筋細胞の増殖・分化・アポトーシスの機序を解明することは、具体的な疾患治療への端緒となる可能性がある。今回我々はhuman induced pluripotent stem cell (hiPSC)を用いて、3次元細胞培養技術を用いた心筋細胞モデルを分化誘導することで、実際のヒトの心筋細胞における形態や機能の変化および分子生物学的な病態の解明を図っている。特にマイクロアレイを用いた隠されたsignaling pathwayの解明や細胞増殖、分化、アポトーシスの観点からNOTCH-BMP10→LVNCといった一連の病態を解明することを試みている。また、分泌型のタンパクであるため、正常BMP10タンパクを加えたり、CRISPR-Cas9システムを用いて、その病的な心筋のレスキュー実験を行うことでV407I-BMP10が病因遺伝子であることを同定するとともに、治療に結び付く可能性を探っている。一方で、in vivoの研究も推進している。CRISPR-Cas9 systemにより変異導入したマウスを作成して、本疾患の本質に迫ることを考えている。
3: やや遅れている
実験系がうまく立ち上がっていない。他の心筋症遺伝子の研究や臨床研究との兼ね合いにより研究時間が限られている。
患者以外の健常人コントロールの血液サンプル由来iPS細胞対して、適切なsgRNAをデザインしてCRISPR-Cas9システムにより、BMP10の遺伝子変異を導入し、人工的な変異iPS細胞を作成し、心筋細胞へ分化・誘導する。変異遺伝子が病因であることの検討および遺伝的背景の表現型への影響を検討する。3次元培養システムの確立をする。マウスモデルの生理学的評価、解剖学的評価、分子生物学的評価を行う。
実験の遅れにより、当初より消耗品を使用していない。海外の学会へ参加予定であったが、本年度は参加できていない。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (8件)
Sci Rep.
巻: 8 ページ: -
10.1038/s41598-018-19310-4
J Am Heart Assoc.
巻: 6 ページ: -
10.1161/JAHA.117.006210.
Circ J.
巻: 81 ページ: 694-700
10.1253/circj.CJ-16-1114.