研究課題
骨形成因子2型受容体(BMPR2)変異は、肺動脈性肺高血圧(PAH)の主要な遺伝的危険因子である。BMPR2変異保有患者は、早期に発症し予後が不良と報告されるが、その機序は不明である。これまで、遺伝子改変動物は、主にマウスを用いて行われてきたが、マウスにおいて、モノクロタリンなどにより高い再現性をもって、高度の肺高血圧(PH)病変を形成するモデルの作成は困難であった。マウスにいて高度のPH作成は困難であることは研究上の課題であったが、近年ゲノム編集により、比較的容易にラットの遺伝子操作が可能となり、進行性ラットPHモデルを用い検討が可能となった。本研究ではCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術を用いて作成したBMPR2遺伝子改変ラットを用いPH病変形成におけるBMPR2遺伝子異常の意義を検討した。今回BMPR2ノックアウトラットにおいて、モノクリタリンPHモデルを作成し肺血管病変を検討した。BMPR2遺伝子変異ラットでは、BMPR2遺伝子に1塩基挿入によるミスセンス変異が確認された。同ラットではBMPR2タンパクの発現低下と下流シグナルSmadリン酸化が低下していた。変異ラットのPHは早期には野生型と同等であったが、変異ラットの生存率は低かった。本研究では、CRISPR/Cas9ゲノム編集により、BMPR2変異の意義をPHの発症初期から進行期まで縦断的に検討が可能であった。これまで、当研究室も含め、BMPR2ノックアウトマウスを用いて、多くの研究がなされたが、進行性の病態を評価することは困難であった。最近、TALEN、 Zing Finger Nuclease (ZFN)などの技術で作成された、BMPR2変異ラットを用いたPAH研究が報告されたが、他には同様の研究はなく、本研究は、CRISPR/Cas9による変異導入ラットでの、BMPR2変異の意義をPHの発症初期から進行期まで縦断的に検討した世界初の研究である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
Am J Respir Crit Care Med
巻: 199 ページ: 1397-1406
Front Pediatr.
巻: 7 ページ: 275
Science Signaling
巻: 12 ページ: eaay4430
小児循環器学会雑誌
巻: 35 ページ: 99-111
IntechOpen
巻: 1 ページ: 89381