デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者iPS細胞(DMD-iPS)とコントロールiPS細胞(Control-iPS)から分化した心筋細胞内のカルシウム濃度をIndo-1で測定した。細胞内カルシウム濃度はDMD-iPS由来心筋細胞で高値であり、また濃度変化もDMD-iPS由来心筋で有意に大きかった。ストレッチチャンバーを用いた機械刺激後、DMD-iPS細胞由来心筋細胞内カルシウム濃度はより高値となった。更に心筋細胞にイソプロテレノールを投与すると、DMD-iPS由来心筋細胞で有意に細胞数低下を認め、WST-8アッセイでは細胞活性の低下を認めた。この原因究明のため細胞死の検討を行った。イソプロテレノール負荷後の心筋細胞をCaspase-3、TUNELで染色したが、DMD-iPSとControl-iPS由来心筋細胞で有意な差を認めなかった。iPS由来心筋細胞内のオートファゴソーム数を比較すると明らかにDMD-iPS由来心筋細胞で増加していた。次にmdxマウスを用いて実験を行った。電子顕微鏡ではControlマウスで認めなかったオートファゴソームをmdxマウス心筋細胞内に認めた。オートファゴソーム数はControlマウスに比べてmdxマウス心筋細胞内で有意に多かった。この数はオートファジー抑制効果があるクロロキン投与によって抑制された。左室線維化についても評価したところ、mdxマウスで明らかに心筋線維化面積が広く、線維化はクロロキン投与で抑制された。mdxマウス、Controlマウスの心機能についてエコー用いて評価を行なった。皮下植え込み型薬剤カプセルを用いた4週間の持続イソプロテレノール負荷後、mdxマウスの左室駆出率はControlマウスに比べて有意に低下した。この低下はクロロキン投与によって明らかに抑制された。
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