研究実績の概要 |
急性巣状細菌性腎炎 (Acute focal bacterial nephritis, AFBN) は, 急性細菌感染症による腎実質内腫瘤を特徴とする上部尿路感染症の一形態であり,急性腎盂腎炎(Acute pyelonephritis, APN)に比して重症病型と考えられる. これまでに,AFBNでは APNに比して血清IL-6,IL-10だけではなく,IFN-γ濃度が有意に上昇するなど細菌感染症としては極めて特異な病態であることを明らかにしていた. このたび,AFBNの病態解明を目的に,新たなバイオマーカーを加えて検討を行った.結果,AFBN群ではAPN群に比し,年齢,有熱期間, 最高体温, 中枢神経症状合併率, 末梢血幼若好中球数, プロカルシトニン値,尿中β2ミクログロブリン/Cr値, 血清IL-6, IL-10, IFN-γおよびsoluble TNF-receptor1濃度が有意に高値であった.また, 多重ロジスティック解析ではAFBNとAPNを鑑別する因子として, 血清中IFN-γ, IL-6濃度が最も有用であることが示された (AUC= 0.86). 現在,本病態の重要なバイオマーカーと考えているIFN-γの産生源について検討を行っている.AFBNおよびAPN患者の末梢血単核球細胞内サイトカインの解析を行っているが,現在のところ明らかな産生細胞の同定には至っていない.また,正常ヒトメサンギウム細胞を用いて,LPS刺激による上清中サイトカイン, とくにIFN-γ濃度について検討したが,明らかな上昇は認めなかった.
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