研究課題
本研究の目的は、慢性腎臓病(CKD)進展を左右する腎臓糸球体レニン・アンジオテンシン系(RAS)の活性化機構におけるa disintegrin and metalloproteinase (ADAM)17の役割を分子病態的に解明することにより、現存するRAS阻害薬では得られない腎糸球体に選択性の高いAng II作用(炎症・線維化)阻害手段の開発や 新規CKDバイオマーカーを探索することである。糸球体細胞の培養系(糸球体内皮細胞 (GEC)、メサンギウム細胞(MC))が発現するADAM17(分子量80-100KD)は、腎炎進展因子であるアンジオテンシンII(Ang II)により産生が増加した。また小児進行性腎炎であるIgA腎症の患者では、免疫組織科学的手法にてADAM17の発現が増強する内皮細胞障害部位に一致してAng IIが増加していた。我々はGECがアンジオテンシノーゲン(AGT)、ACE1、ACE2の発現量を変化させること で腎炎進展時の病態形成に関与していることを想定している。本年度、ACE2の切断放出(ACE2量の低下)に働くADAM17とACE1により産生増加するAngIIの糸球体発現増強が腎炎において確認されたことより、今後は、培養細胞を用いて、RAS活性制御に関わるADAM17の発現調節機構の分析に取り組む。
3: やや遅れている
小児慢性腎臓病患者における腎生検材料、尿を用いたADAM17発現の検討を続けている。尿中のACE1、ACE2の蛋白発現(western blot)の検討が、尿の採取状態により大きく変動し、正常(健康)児の尿との比較が困難になることがある。今後は、室温での蛋白分解を避けるために、排尿後速やかに氷上保管あるいは冷凍し検査まで保存することにした。
腎炎患者における糸球体ADAM17発現細胞の同定とRAS活性化機序への関与を動物腎炎モデルを用いて検討する。 腎炎患者における組織発現レベルと尿中ADAM17量との関係を検討することにより、新たな尿バイオマーカーとしての可能性や小児CKDの進展阻止戦略を考慮して いく。
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