研究課題
平成29~30年度のおもな研究実績は以下の通りである.①新しい遺伝子パネル(61遺伝子を搭載)を作成し,分子遺伝学的な網羅的遺伝子解析の手法を確立できた.②平成30年度は93名の方の遺伝子解析を行い,4名のDJSの患者さんを分子遺伝学的に診断できた,③対象患者さんの臨床データを収集・解析している.これらの実績をもとに,各関連学会にて学会報告を以下のように行った.①第121回日本小児科学会学術集会,遺伝性肝疾患を疑う患者に対する新生児乳児胆汁うっ滞遺伝子パネルを用いた網羅的解析(口演発表).②第63回日本人類遺伝学会,小児稀少難病,進行性家族性肝内胆汁うっ滞症2型への遺伝子解析とABCB11日本人高頻度変異:フェニル酪酸ナトリウム治療適応を見据えて(口演,大会賞候補セッション).③North American Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition 2018,DIVERSITY OF ATP8B1 MUTATIONS IN JAPANESE PATIENTS WITH INTRAHEPATIC CHOLESTASIS ASSOCIATED WITH LOW GAMMA-GLUTAMYL TRANSPEPTIDASE LEVEL(ポスター発表),④The 2nd Vinmec international Conference on Cell and Gene Therapy Conference,Inherited Disorders of Neonatal/Infantile Intrahepatic Cholestasis and Molecular Genetic Testing in an Era of Precision Medicine(招待講演,英語).
2: おおむね順調に進展している
本研究は,新生児Dubin-Johnson症候群とRotor症候群を次世代高速シークエンサーとバイオインフォマティクスを用い,分子遺伝学的に診断する解析手法の確立を指向する.平成30年度の研究計画は,①解析対象遺伝子を含めた新しい遺伝子解析パネルを作成,②対象例の収集,遺伝子解析実験,データ解析,③肝臓病理組織について検討,④肝組織からmRNAを抽出し遺伝子発現について検討する,である.我々は①に対して,新生児,乳児期の遺伝性胆汁うっ滞の原因となる疾患の責任遺伝子61個を候補とした.この61遺伝子に対してIonAmpliseqDesignerを使用して遺伝子パネルをデザインした.陽性対照に使用して,この遺伝子パネルが機能するかを確認し,成功した.②について,全国から遺伝子解析対象が順調に集まっている.平成30年度は93名の遺伝子解析を実施できた.また,この対象者から4名の新規Dubin-Johnson症候群の患者さんが同定された.臨床情報についても収集できている.③について一部の患者さんの肝臓標本をもとにした病理組織検査ができた.④について現在mRNAの抽出には検体不足のためできていない.引き続き研究協力施設と密に連携をとり,解析対象患者の肝臓組織について収集,解析をすすめる計画である.
現在のところ,研究は比較的計画通り進行していると考えられる.そのため,当初の研究計画に大幅な変更を求めていない.令和元年度については遺伝性抱合型高ビリルビン血症の疑われる患者に対して,次世代高速シークエンサーを使用して遺伝子解析を積極的に継続し,全国から対象患者さんの募集を継続する.遺伝子解析を行った対象患者さんの臨床情報,病理組織について詳細な検討を行う.本年度も得られた結果について順次,日本小児科学会学術集会,日本肝臓学会学術集会,小児肝臓研究会,アメリカ人類遺伝学会などで研究発表を行う予定である.研究計画最終年度であるため英文論文を作成する.
分担者が10643円の執行残があったため。次年度に執行残を含めて使用する計画とした。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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10.1016/j.ebiom
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