研究課題/領域番号 |
17K10151
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
古道 一樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10338105)
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研究分担者 |
芝田 晋介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70407089)
湯浅 慎介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90398628)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心臓前駆細胞 / ゲノム編集 / iPS細胞 / 心臓領域 |
研究実績の概要 |
平成30年度は初年度の計画に引き続き、レポーターiPS細胞株の樹立を目指した。NKX2.5遺伝子を利用した全心臓前駆細胞の選別に加え、二次心臓領域由来前駆細胞に特異的に発現する転写因子ISL1の開始コドン直前にP2A配列を挟んでCre組み換え酵素を、またヒトにおける遺伝子発現のsafety siteであるPPP1R12C遺伝子のイントロン内に、EF1aプロモーター下にCre依存性にEGFPを発現するトランスジーンを挿入するための遺伝子組み換え用ドナーベクターを新たに構築した。前モデルでは、蛍光タンパクと転写因子間をIRES配列を用いて接続したが、転写因子の発現低下につながる可能性が疑われたため、P2A配列を用いた。しかし、前年度に構築したNKX2.5遺伝子の直前にP2A配列を挟んでturboRFPを導入したiPS細胞が、心筋分化過程で心臓前駆細胞に分化する途中一過性のみに赤色蛍光を発現し、その発現が安定しない問題が生じた。P2A配列がうまく作用していない可能性を疑い、再度IRES配列を用いたトランスジーンに計画を変更した。さらにEF1aプロモーターにLoxP配列で挟まれたNeo耐性遺伝子およびEGFP遺伝子を連結したトランスジーンは、HeLa細胞にCre強制発現遺伝子とともに共発現させると、EGFPをCre依存性に発現することが確認されたが、iPS細胞にゲノム編集して導入した後に、Cre強制発現ベクターをトランスフェクションしてもEGFPの発現が認められなかった。原因として、Creタンパクの核内移行の問題、トランスフェクション効率の問題、iPS細胞内でのEF1aプロモーターのサイレンシングなどが疑われており、現在確認中である。心内膜細胞ソートシステムについては、ゲノム編集に必要なドナーベクターおよびCRISPR/Cas9ベクターを構築し、現在ゲノム編集効率を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来、半永続的に発現すると思われたRFP-P2A-NKX2.5トランスジーンが、短い期間の一過性発現に終わってしまっている問題、およびEF1a-loxP-Neo-loxP-EGFPトランスジーンが細胞内でCre依存性にEGFPを発現できることの確認が、HeLa細胞の強制発現系では確認されているにもかかわらず、ゲノム編集後のiPS細胞で確認できていない点が研究の進捗を遅らせる原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたり、レポーター細胞株の樹立および有用性の確認をめざす。克服すべき課題として、心筋前駆細胞のラベルのための半永続的蛍光タンパク発現が挙げられ、IRES配列の活用およびCre発現効率の改善により、トランスジーンの機能を確認する。技術的にはトランスジーンを3重でゲノム編集することは可能となっており、早期のトリプルトランスジェニックiPS細胞を樹立し、心臓前駆細胞の単離を実現する。心内膜細胞ソートシステムについても、ベクターは構築済みであり、この2年間で確立したゲノム編集プロトコルを用いて、早急にラインを確立する。
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