研究課題/領域番号 |
17K10152
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
粟津 緑 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20129315)
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研究分担者 |
飛彈 麻里子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (20276306)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 腎発生 / 母体手栄養 / ヒドロキシメチル化 |
研究実績の概要 |
ラット胎生18日後腎の全般的ヒドロキシメチル(5hmC)化は母体低栄養で対照の約1.5倍に増加していた。一方、5hmC-Seq法により検出された遺伝子数は母体低栄養で対照に比し少なかった(対照943、母体低栄養531)。このうち両者に共通な遺伝子は363個あった。5hmC化された部位はintergenic regionが両者とも約8割、intronが2割弱、transcriptional start siteは両者とも1遺伝子のみであった。腎発生に重要な遺伝子でqPCR、ウェスタンブロットで差が認められたものにはAmph1、Cdh11、Glucci1があった。どれも母体低栄養で5hmC化が低下しており、Amph1、Cdh11の発現は増加、Glucci1の発現は低下していた。Gli3、Agtr1aも母体低栄養で5hmC化が低下していたが発現は対照と差がなく、5hmC化とmRNA・蛋白発現との関係に一定の傾向が認められなかった。 一方、胎生13日のマウス後腎器官培養系において、メチル化シトシン(5mC)を水酸化するTet酵素を介し5hmC化を促進するビタミンC存在下では尿管芽分岐、腎成長が抑制された。またTet酵素阻害薬であるdimethyloxallyl glycine (DMOG)存在下では尿管芽分岐、腎成長が促進された。研究代表者の過去の検討では母体低栄養腎の全般的DNAメチル化は対照に比し低下しており、葉酸投与によるDNAメチル化の増加により母体低栄養腎の尿管芽分岐、成長が改善されている。今回のビタミンC、DMOGの効果がDNAメチル化の変化による二次的影響なのか、5hmCの増減によるのかを明らかにする必要がある。またDMOGは低酸素誘導因子(HIF)a阻害薬でもあり、HIFaは腎発生に複雑な影響を与えるため、DMOGの効果が5hmC化を介するのか否かも今後の検討を要する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初平成30年度に行う予定であったDNAヒドロキシメチル化の正常腎、母体低栄養腎発達における役割の検討がほぼ終了した。また母体低栄養腎と対照で差が認められた遺伝子のメチル化、ヒドロキシメチル化を確認するための新たなサンプルを採取済みであり、平成30年度に解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に得られた結果はDNAヒドロキシメチル化の母体低栄養腎における役割を示唆するものであり、これを更に検討する。具体的にはヒドロキシメチル化酵素Tetの発現、活性を正常、母体低栄養の腎発生過程において研究する。また薬剤でなくsiRNAによるTet酵素の阻害によりDMOGの効果が再現されるか否かを検討する。同時にDNAメチル化とヒドロキシメチル化のどちらが腎発生において重要な役割を担うのかを両者を同時に定量することにより検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿した論文の出版費を見込んでいたが受理されずその経費が未使用である。追加データを加え平成30年度に再投稿、出版費用にあてる。またシークエンスを外注する予定であったが請求、支出が年度をまたぐ可能性があったため平成30年度に発注することとし未使用額が出た。
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