研究課題/領域番号 |
17K10153
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
内田 敬子 慶應義塾大学, 保健管理センター(日吉), 講師 (50286522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺動脈 / 転写因子 / 平滑筋 |
研究実績の概要 |
Tbx4の肺間葉系特異的エンハンサー(Tbx4-lung mesenchymal enhancer, Tbx4-LME)のうち種間で保存性の高い150 bpの領域Tbx4-core lung mesenchymal enhancer, Tbx4-C-LMEを4回タンデムにつなげ、その3'側にhsp68 minimal promoterとLacZ遺伝子を連結させたコンストラクトを構築し、transgenic mouseの作製を試みた。このコンストラクトをインジェクションした受精卵を偽妊娠マウスに移植し、帝王切開で胎生14日に胎仔を取り出し固定、Whole-mount X-gal染色を実施した(F0解析)。2回のインジェクションにより、トータル46匹の胎仔を得、うち、PCRでLacZ遺伝子を確認できたのが7匹、うちX-gal染色陽性の胎仔は5匹であった。さらに、5匹中3匹は肺内にX-gal染色陽性領域が認められた。Tbx4-C-LMEは肺間葉系組織および、それに由来する細胞に広く発現すると予想していたが、予想に反して、複数個体の胎生14日胚において、特に気道に沿って気道平滑筋と思われる領域に限局してX-gal陽性領域が認められた。一方、肺動脈平滑筋領域には認められなかった。また、肺外にも骨格に比較的強い発現領域が認められ、肺特異性が保持されなかった。 肺動脈性肺高血圧症の患者で認められたTBX4の変異を導入し、野生型または変異型TBX4を細胞株に強制発現させ、細胞内局在や転写活性がどのように変化するかを観察した。細胞染色を用いて細胞内局在を確認したところ、野生型では核に限局して発現していたが、一部の変異型TBX4では細胞全体に発現していており、核移行性が障害されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Tbx4-C-LMEトランスジェニックマウスを用いたレポーターアッセイの結果、複数の胎仔で気道平滑筋領域での発現が認められ、肺血管における発現が認められなかったので、Tbx4-C-LME-Creの作製やTbx4-C-LME-GFPの作製ができなかったため。現在、他の肺動脈平滑筋特異的発現分子に着目してレポーターアッセイに着手している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続してTbx4の肺における役割、特に肺血管発生と肺動脈性肺高血圧における役割を解明すべく研究を続けていくことには変わりないが、より肺動脈平滑筋に特異的な標的分子の発見を目指し、肺動脈平滑筋に特異的に発現する他の分子の探索とその分子のエンハンサー探索も行うこととした。一つの候補として、すでに体血管平滑筋や気道平滑筋に発現が低く、肺動脈平滑筋に発現が高い分子を特定しており、この分子のエンハンサー探索に着手している。また、Tbx4の肺血管発生や肺動脈性肺高血圧における役割を解明するために、当初はTbx4-C-LME特異的Tbx4欠損マウスの作製を予定していたが、Tbx4 flox/+マウス(L. A. Naiche, et al. Development 2007) の入手準備を始める予定である。
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