研究課題/領域番号 |
17K10154
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
阿部 祥英 昭和大学, 医学部, 准教授 (10384447)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ネフローゼ症候群 / アディポネクチン / ミトコンドリア / ポドサイト |
研究実績の概要 |
ポドサイト(糸球体上皮細胞)のミトコンドリア機能を解析するには、千葉県こども病院にある細胞外フラックスアナライザー (XFe96) が必要である。しかし、コロナ禍の影響で施設間の往来に制限があり、細胞実験を計画通りに進められなかった。そこで、ミトコンドリア機能改善に関与するアディポネクチン(ADPN)に着目し、以下の課題「初発のステロイド感受性ネフローゼ症候群における血清ADPN増加の誘因に関する検討」を代替研究として推進した。以下、要約を記載する。 【背景】我々は初発のステロイド感受性ネフローゼ症候群(NS)患児でADPNや高分子量ADPN(HMW-ADPN)が病期によって変動することを見出した。しかし、NSに伴う著明な蛋白尿、低アルブミン(Alb)血症、高脂血症のいずれがADPN増加の誘因になっているかは不明である。【目的】小児NSにおける血清ADPNの誘因に蛋白尿を伴わない低Alb血症や高脂血症が関与するか否かを明らかにする。【対象および方法】対象は、対照群(50例)、NS群(35例)、低Alb群(9例)、高脂血症群(5例)の4群である。統計学的検討にはKruskal-Wallis testを用いた。【結果】4群において、血清ADPN値(μg/mL)の中央値はそれぞれ、10.4、36.7、18.0、9.4であった。NS群のADPN値は、対照群(p<0.0001)、低Alb群・高脂血症群(ともにp<0.01)と比較して有意に高値であった。また、ADPNは低Alb群と高脂血症群で対照群と有意差はなく、低Alb群と高脂血症群の間でも有意差はなかった。【考察および結語】今回の検討では、蛋白尿のない低Alb血症や高脂血症のみでは、血清ADPN値の増加は認められなかった。すなわち、NS群におけるADPNの増加にそれらの関与は否定的で、著明な蛋白尿やその他の要因の関与が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポドサイト(糸球体上皮細胞)のミトコンドリア機能を解析するには、千葉県こども病院にある細胞外フラックスアナライザー (XFe96) が必要であるが、長期化するコロナ禍の影響で施設間の往来に制限を受け、細胞実験が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
長期化するコロナ禍で施設間の往来が制限され、研究遂行に必要な細胞外フラックスアナライザー (XFe96) の使用も制限されている。状況により、制限が緩和されない場合は、以下の臨床研究とSystematic reviewを推進する。 臨床研究に関しては、ミトコンドリア機能改善に関与するアディポネクチン(ADPN)に着目し、ネフローゼ症候群患児においてADPN値が上昇する病態的意義を解明するため、ネフローゼ症候群で認められる低アルブミン血症や高脂血症がADPN値上昇の誘因になるか、症例の蓄積を進め、さらに解析を進める。 また、コロナ禍においても影響を受けない研究を進めるため、慢性腎臓病に対するcoenzyme Q10の効果に関して、Systematic reviewを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ測定のための検体確保が不足し、残金(143287円)が生じた。2022年度において、検体を確保し、データ測定にその費用をあてる。
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