研究実績の概要 |
近位尿細管特異的にKeap1遺伝子が不活化されたマウスの作製については終了し、実験に供するべく繁殖などの作業を行っている。実際には、[Keap1(flox/WT), KAP-Cre(+)]マウスと、[Keap1(flox/WT), KAP-Cre(-)]マウスを交配して繁殖及び、実験に供するマウスを得ている。すなわち、上記の交配により得られた、[Keap1(flox/flox), KAP-Cre(+)]は、近位尿細管(主に近位直尿細管)においてKeap1遺伝子が不活化され、その結果、同部位においてNrf2が分解されずに豊富に存在することとなる。Nrf2は抗酸化防御機構の中心となる物質であり、種々の抗酸化作用を有する遺伝子発現を促進的に調節している。このマウスの表現型の解析では、腎障害モデルを導入しない状況では、特段の異常な表現型を呈していないことが確認され、長期の生存も可能であった。対照群としては、上記の交配により得られる同胞の中で、[Keap1(WT/WT), KAP-Cre(+)]マウス、あるいは、[Keap1(WT/WT), KAP-Cre(-)]マウスを用いて検討している。長期生存した[Keap1(flox/flox), KAP-Cre(+)]マウス(すなわち、近位尿細管特異的にKeap1遺伝子が不活化されたマウス)において、水腎症や腎実質における嚢胞形成などの出現も期待されたが、現時点ではその確認には至っていない。シクロスポリン投与による腎障害の惹起については、シクロスポリン投与によっても組織学的に顕著な腎障害が、対照群においても認められず、何らかの工夫が必要な状況にある。
|